休職を決める数週間前から、私はある症状に悩まされていた。
何をやっても集中が続かないのだ。
そもそも集中するのは苦手な方だし、喋ったり音楽を聴きながら作業するのも日常茶飯事なのだが、それとは訳が違う。集中できないというよりかは、集中しても何も出てこない。
いつもなら「あれをして、これをして」というタスクの流れや、「ここをこう変更した方が良さそうだ」と言った具体的な作業内容を思い浮かべてから作業をするようにしている。作業前のイメトレをするかしないかでは、作業効率が雲泥の差であることをこの数年間で学んだからだ。
しかし、ある時から「イメージする」ということが難しくなった。「あのタスクをやらなきゃ」という焦燥感はあるのに、それを終わらせるまでの道筋を思い浮かべることができなくなった。
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「鬱は心の病気ではなく脳の病気だ」と言われることがある。実際に学術的にどちらが正しいのかは素人の私にはわからない。しかし個人の感覚としては、たしかにいつもより頭が働かない実感がある。
例えるならば、ゲームのステータスで最大HPやMPが減らされるあのデバフみたいなものだ。自分では最大火力を出しているつもりなのに、いつもの何割かの力しか出せない。いつも倒せていたはずの敵が倒せない。
そんな感じなので、悔しいしヤキモキするし、そもそも自分が全力を出せていないのでは?という気持ちになってくる。一方で、焦っても集中できるわけでもなければ、もちろん全力なんて出せるはずもない。完全に「詰み」だ。
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幸いなことに、私には休職という「いつも通り」に戻るまでのチャンスが与えられている。これ以上症状を悪化させず、休息をとる時間のことを、私はある種の「チャンス」だと捉えている。
今日だってやろうと思った作業はうまく進まずヤキモキしているが、この文章は自分でも驚くほどすらすらと書けた。
今はそうやって、自分のできることの感覚をひとつひとつ取り返していくしかないのかもしれない。ちょっと気の遠くなりそうな作業だけど。