もちもちをびよびよ

sanagi_yuragi
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公開:2025/12/11

温かいタピオカを初めて飲んでいる。タピオカって、もちもちがポポポポ……ってたくさん口の中に入ってくるのが楽しいのに、熱いからあんまり勢いよく吸えない。舌をやけどしないようにポ、ポ、と吸い、ゆっくり口の中でもちもちする。頭がぼんやり、痛い。朝に見た気圧予報には警戒マークがついていた。だけど半分くらいは緊張のせいかな、と思う。ポポ。

今日は一週間ぶりに授業に行った。今学期はたくさんの授業を離脱してしまったので、対面の授業はもうこれしか行っていない。気分としては全然行きたい感じではなかったが、今日はみんなの前でプレゼンをする日だったので、体中のスタミナをかき集めて家を出た。

教室にいると、自分だけ人の皮をかぶった汚い化物なんじゃないか、って気分になる。ディスカッションとかで人と話すとき、この皮の下の素性に気づかないでほしいと祈る気持ちと、気づいてほしいと願う気持ちが、混ざり合って胸のあたりでどろりとする。

プレゼンの手ごたえはまぁまぁいい感じだった。先生からも面白がってもらえて(アドバイスもあったけど)、グループの人にも授業後にわざわざ感想を言ってもらえた。印象に残ることができてよかったと思いつつ、ちょっといたたまれないような気持ちにもなる。

彼らの瞳にうつっていた私はたぶん、私が知っている私の形とはすこしずれている。そのわからなさが不安だったり、希望だったりする。

自分の書いた文章を読んでいると、少しずつ心が落ち着く。私の知っている形の私しかそこにはいないから、私ってこうだったなと思い出せる。それに、私を傷つけることは書かれていないから、どんなときでも安心して読める。だけど、私の書いた文章には、私が知っていることしかかかれていない。

午後、前日に冷凍しておいたたまごサンドを食べながら、つくたべを久々に読み返した。かわいすぎる春日さんにギュンギュンしつつ、はらこ飯がおいしそうなこと、シュトーレンを家で作ってみたかったことを思い出す。

フィクションに触れていると、今まで思いつかなかった楽しいことに出会えるからうれしい。縦に細長くてトンネルみたいな人生を、横に広げてくれる感じがするから、人の物語が好き。

私の手でこねこね、もちもちするものを、横にびよーんって、のばしてもらえる感覚。薄くなった生地ごしに、向こうの光が透けて見えて、大丈夫かもって思う。

私をみていた彼らの瞳のことも、この世界にあふれている物語たちも、きっと悪いものじゃなくて、みつめかえす私をやわらかく照らすために、待ってくれている。まあ時々、めちゃめちゃにするやつにも出会うけど、私はもちもちだから、かき集めてこねれば再び戻るのだ。

そう、思っておきたい。

最後のタピオカを吸い終わる。もう、舌は冷えている。