風呂に入る。歯を磨く。それだけのことをする余裕もない。
将棋を指しても一手先が見えない。
そして天を見上げることもない。
これも精神状態の指標なのかもしれない。
思い返せばあの頃は見上げることもなかった。あれほど風に揺られてただ空と話すのが好きだった筈なのに。いつからだろう、空の声も聞こえなくなった。
深い隧を抜けた頃、呼ばれた気がした。そうしてふと見上げた雲一つない青空は、私の知る空より遥かに大きくて。
その夜、光の雨を見た。無数の星の燦然と輝く空を、私は暗闇だと思い込んでいたらしい。
今日の空は広いだろうか。