ウエストランドという漫才コンビがいる。
2020年のM-1で面白いなと思って、彼らが出てる番組や動画を観るようになった。
ただ、他の人に説明しづらいことがある。
ウエストランドは井口さんと河本さんという2人組で、井口さんによる世の中の色々なことへの悪口が漫才のメインになっている。
2022年のM-1で優勝された後、「みんながうっすら思っていたことを悪口ネタにしている」というような説明のされ方を多く見かけた。
実際、ネタを書いている井口さんは普段から悪口を言うタイプだそうで、ネタのほとんどは彼が実際に気付いたことを元にしているようだ。
でも僕は、あくまで漫才なので、ウエストランドの漫才で笑うことと、ネタの中で言われていることに同意するかはまったく別のことだと思っている。
例えば2020年のM-1では、「かわいくて性格のいい (女の) 子? (そんなものはこの世に) いないよ?」というセリフがあった。
この場面を僕は面白いと思って笑ったけど、「かわいくて性格のいい子」が本当にいないなんて、もちろん思っていない。
一言で言えば、無茶苦茶なことを言ってるから面白かったのだ。
同じ場面で笑った他の人も、ほとんどはそうなんじゃないかと想像している。
2022年のネタは、より現実に即した内容になったけど、やはり漫才なので実際より言いすぎている。
わかりやすいところだと、「金の盾を持っているYouTuberはいずれ全員警察に捕まる」とか。そんなわけないじゃないですか。
でもそれを、熱量持って体重乗せて井口さんが叫ぶのが面白い。そこを楽しんでいいはずだ。内容に同意しなくても。
当の井口さん自身が、2022年のM-1ネタで、「お笑いにはメッセージ性なんて必要ない」って言ってたのだし。
同意してもらうためではなく、人を笑わせるために作られた漫才なんだから。
と思うんだけど、そのことを伝えるのが、説明下手の僕には荷が重い。
2020年のM-1直後、職場でM-1の話が出た。その場には、観た人も観てない人もいた。
僕が「ウエストランドってコンビが面白かった。『かわいくて性格のいい子? いないよ?』ってネタの」と言ったとき、反応が2つに分かれた。
視聴済みの人は、「ああ、あのコンビね」と笑顔で聴いてくれた。未視聴の人は、「こいつそんな思考の持ち主なのか」と、僕に冷ややかな視線を向けた。
2022年のM-1は、実家にいて母親と一緒に観た。母親はウエストランドのネタを観て、「ふうん。みんながどこかで思っていることをネタにしてるみたいな感じ?」と静かに言った。
その時画面の中では井口さんが「虚無感! 田舎で頑張っても都会では通用しないもんなの虚無感!」と叫んでいた。母親は地方で育って上京してきた人だから、思うところがあったかもしれない。
そもそもの大前提として、お笑いには好き嫌いがある。漫才としてであっても悪口を聞くだけで嫌だという人もいる。僕も基本的には悪口を聞きたくないタイプなので、その気持ちはわかる。
だから、誰でもウエストランドを面白いと思うべきだみたいなことを言いたいわけではない。
僕が好きな芸人を聞かれた時に、誤解がないように伝えるのが、僕の説明力では難しい。それだけ。