妄想トレイン

sardine
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BS日テレに『友近・礼二の妄想トレイン』という番組がある。

家族で毎週観ていたんだけど、今週からリニューアルして趣向が変わった。

これまでは、レギュラーのお二人やゲストが、行きたい場所や食べたいもの、乗りたい電車をもとにスタジオで旅行の日程を考え、現地を訪れたり名物を食べたりの妄想旅をする番組だった。

番組内で旅の予定を立てるというのは、あくまでそういうテイということであって、実際には現地ロケが先に行われていて、それに基づいた台本がある。でも、旅行って計画段階も楽しさがあるし、このテイがあるからこそ自発的に旅行に行くことのよさを思い出させてくれていた。

実際に訪れた人目線の現地映像がふんだんに用意されたり、食事シーンでは味を想像しながら出演者が演技で食べてみたりと、視聴者も一緒に妄想旅できるような番組になっていた。

スタジオで出演者から出た話題に対応するために後で追加取材したと思われる現地映像も時々あって、かなり手間をかけて作られているなと感じていた。

余談だけど、放送が続くうちに、スタジオでの妄想旅トークに定番の流れも生まれていた。「汁物を一気に啜って咳き込む人 (礼二)」「気だるげな中年夫婦 (友近・礼二)」「2時間サスペンスの犯人追及シーン (高橋秀樹ゲスト回)」「演歌歌手の歌声披露 (徳永ゆうき他)」とか。番組に必須というわけではないけど、僕はこの辺も含めて楽しんでいた。

また、番組名に「トレイン」とついている通り鉄道旅を基本にしていて、全国の様々な列車も紹介してくれていた。僕はまったく興味がなかった分野なんだけど、この番組のおかげで、全国に様々な観光列車があることを知った。

特に、主に九州で独特な列車を多数デザインしている水戸岡鋭治さんのことは、この番組がなければ一生知らなかったんじゃないかと思う。それが今では「このデザインは水戸岡先生っぽいな」「これは違いそう」と予想できるようになりつつあった。

……というのが先週まで。

今週リニューアルが行われて、ナレーション入りのVTRを観てメインのお二人がトークする、という形式に変わったようだ。

初回となった4月2日の放送では、旅行会社のパンフレットからお二人が選んだプランのVTRが半分、残り半分がスタジオトーク、という感じだった。

スタジオでプランを選ぶというテイではあったんだけど、旅程はあらかじめ決められたプラン通りだったし、観光スポットについてもVTRを観ての感想になったので、現地に行った様子を妄想するという要素はほぼなくなった。

電車移動の旅ではあったし、VTR内で列車の説明も少しあったけど、鉄道好きのゲストが「この車両はここが特徴的なんですよ」と熱を持って語ってくれることもない。

リニューアル前は1時間の放送で1日分の妄想旅をしていたのに対して、リニューアル初回の放送では3日分くらいの内容を同じ時間で紹介していたので、それぞれの観光スポットや名物料理もだいぶ足早に過ぎていった。プランの紹介が放送内容の半分を占めていて、まるで通販番組のようだった。

今まで慣れ親しんで来た形式からがらりと変わったので、「妄想トレイン」の独自性や魅力がすっかり失われたように感じてしまった。

一方で、友近さんと礼二さんのトークは二人だけでまとまった時間行われるようになったので、Xではラジオを聴いているようで楽しかったという感想も見かけた。

これまでの番組内容に不満があったらしい人が、リニューアル後の方がいいと書いているのもあった。

観なくなる人もいるだろうし、リニューアルを喜んでいる人も、今後見るようになる人もいるだろうから、これによって視聴者が増えたり減ったりするというよりは、入れ替わると言った方が正確なのかもしれない。

今回のリニューアルにどんな理由があったのか、関係者でもなく番組制作に詳しくもない僕には邪推しかできない。だから誰かを責めたいわけではない。

ただ、これまでこの番組のどこを気に入っていたのか、どこが変わって残念に感じたのかを記録しておきたくて、この記事を書いた。