2023年はTwitterがおかしくなってしまった一年だった。けれど、やっぱりわたしは抜け出そうとは思わなかった。Twitterでこれまでも、これからもたくさんの音楽を教えてもらって幸せだったから。2023年は大切な友達たちにもたくさんの音楽を教えてもらえて幸せでした(たくさんのライブにも足を運んだ)
国内編と同じく、今年は(いつもそうなのだが)メランコリックでかつ優しく、それでも絶望ではなく未来を見せてくれる音(の中に悲しみや怒りが表出している)ものが好きだった。現実から引きあ剥がされるためにわたしたちは踊り狂う。夜が明けてしまえばそこには、強固な現実が立ち現れる。
どうしようもなく資本主義に加担せざるを得ないことに偽善的な罪の意識を感じつつ、Xへガザへの祈りや抵抗の意思を表明する。そういうことは全て無駄ではない、そう信じていたい。生きることも、見ることも、感じることも、言葉に残すことも、どれほど拙くとも(わたしを着飾るものではなく)、抵抗=生きることであると思っていたい。
御託はさておき、聞いたものをまとめていく(蔵書の整理はまるで進まない)
Nicole Dollanger "Married in Mount Airy"
削ぎ落とされたミニマルな音に重ねられるゴスの気配とドリーミーな感じはとても狂おしい。メランコリックとおう単語でくくってしまうことが恐れ多い(語彙がたりない)。重たく暗く、冷たい光景へと導かれつつも、通して聞き終わる頃には真冬の早朝のような微かな希望に満たされる音楽に満ちている。このアルバムにで出会えて本当に良かった。
参考
Lucinda Chua "YIAN"
https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=13333
音源で昇天できる。彼女が書いてくれた詩によって。
「この人生の生き方を教えて、年を重ねること以外の方法で」とチュアは呼びかける。「この人生にはまだ何かある、光り輝く天使」とユールは歌い返し、無限の空間のような感覚の中で、2人のアーティストたちのユニークな歌声が交錯していく。
Lý Trang "Syenite"
タイトル通り、《鉱物》閃長岩の美しさ、つまりは鉱石の冷たさと彩りを思わせる音の造形が光る。「疎外感」に基づき制作されたという本作を聞きながら東京の町を一人逍遥することが何度もあった。
Khotin "Release Spirit"
踊り疲れた夜明けに聞きたいチルアウト(踊り疲れていない時は踊ろうかなと思わせる静かなビート、リリカルなる音の連なり)
https://diskunion.net/clubt/ct/detail/1008616074
Loscil / Lawrence English "Colours of Air"
100年前のパイプオルガンから発せられる音に加えられるうねり。それは加工により与えられた神聖さなのか、それともアフォーダンスとして、わたしたちの耳がそれを神聖だと感じるのであろうか。この音さえあれば、祈りの場でわたしたちは疲れることなく踊り続けていられるのかもしれない。
The Arcs "Electrophonic Chronic"
わたしはBlack Keysよりもこちらが好き。ガレージ感以外のものがたくさん詰まっていて、ダンオーバックが周囲の大切なメンバーの死や色々をくみながらも楽しく作り上げた音楽の結晶がここにある感じ。M8のBehind the Eyesのオーバックの声は本当にセクシー...。
https://kenta45rpm.com/2023/02/01/electrophonic-chronic-the-arcs/
Green-House "A Host for All Kinds of Life"
こころのささくれや焦燥感をそっとなでてくれる残響。あまりにも優しいアンビエント。ライブにも行けてよかった...サインもらっておけばよかったな..。
https://music.apple.com/jp/album/a-host-for-all-kinds-of-life/1699798128
Loraine James "Gentle Confrontation"
みんな挙げているからあえて挙げなくても..とはおもいつつ。こちらとLaurel Haloは本当に素晴らしかった。タイトルにあるとおり、Gentleで攻撃性がない音の作り込みと、それにより内省を促される心地よさよ...。また来日してくれないかな。
https://belongmedia.net/2023/09/21/loraine-james-interview/
Laurel Halo "Atlas"
今年のアンビエント2枚はこれとGentle Confrontationでした...。
坂本龍一 "12"
日記を書くように制作されたこれは音楽と音の境目を行き来しながら、聴く者の内面と外側を溶かして張り合わせて、よろこびも悲しみも混ざり合っている一つの心地よさへと封じ込めてしまうような怖ろしさがある。偉大な音楽家の死のニュースを聞いて、こればかり聞いていた。「怪物」を見て泣いた。何の意味で泣いたのか、わたしにはまだ分からない。でも、この音を聞いて思ったことは語り伝えたいし、生きている間に彼が作る音を聞けたことを本当にありがとうと思う。執筆しながら、「戦場のメリークリスマス」のつじあやのカバーをたくさん聞いた。BTTBも、ウラBTTBも、それから大貫妙子とのコラボ、UTAUも聞いた。
AMBIENT KYOTOでショップの店員さんがUTAUをおすすめしていたのを聞いて「そうだよね。本当に良いアルバムだよね」と思えたのも良かった。同じ音楽を聞いている人は遠い家族なのだと思っているから。
Boygenius "the record"
Fieh "III"
ドリーミーじゃないと踊れないのかもしれない。M10最高。