映画『きさらぎ駅』は81分の邦画である。ジャンルはホラー。Amazonプライムビデオで見られるのでウォッチパーティに向いている。
そもそも「きさらぎ駅」という話はインターネットの匿名掲示板からはじまった。大昔読んだときは怖さよりもスレッド主のインターネット仕草が大変上手なことに感心した覚えがある。うまくは言えないのだが、個人情報がほとんどでてこないのと展開に集中させる勢いがあってスレッド主の匂いが薄かった。
映画『きさらぎ駅』のいいところは、匿名掲示板のきさらぎ駅を知らないひとも、なんとなく知っているひとも、ばっちり覚えているひとも、知識の差なく楽しめるところである。ホラーの展開もちゃんとあるし全体的にテンポが良く途中でダレない。見終わったときには「予算少なかったんだろうにすごいよ」とすなおに褒められる良作である。
わたしはホラーのなにかが起こりそうな雰囲気が苦手だ。あと動画をひとりで見てると飽きるか寝落ちる。でもこの作品は見ておきたかった。馴染みの電車がでるからである。匿名掲示板時代からきさらぎ駅のはじまりは遠州鉄道なのだ。
そう、私は映画『きさらぎ駅』を遠州鉄道の応援上映のつもりで見ていた。
遠州鉄道は静岡県西部を走る電車である。大昔は2路線あったものの現在は1つの路線で街中と郊外の平坦な道を結んでいる。ダイヤ改正などほとんどなく12分に1本電車がくるし、快速も行き先違いもないので楽な電車だ。地元の足として親しまれている。いまでこそラッピング電車でカラフルだが、赤一色の車体に白いラインが映えて地元では「赤電」と呼ばれている。
映画にももちろんでてきた。内装の紫色のシートがちょっとふかっとしていることと、2両の列車の間に壁がなく見通しがいいことを思い出して懐かしくなった。
数年前からなぜか遠州鉄道はきさらぎ駅を売り出した。特製グッズも作ったしシンカリオンコラボもした。それまで電車は足と言わんばかりに自社グッズも珍しかったくせにである。エヴァコラボもしてたし電車で儲ける道を見出したのかもしれない。
いずれにせよ澄ました優等生がサブカルも対応できますけど?といった顔を見せるようでちょっと微笑ましい。映画で久しぶりに見たことのある駅や電車、風景を見られて嬉しかった。そんな話である。
余談だが、きさらぎ駅はTRPGの題材にもされている。インセインで1つ、エモクロアTRPGで1つ遊んだが、インセインの非公式シナリオ「3000人きさらぎ駅」で3000人を迎えてしまったPC4きさらぎ駅のことはずっと気になってる。駅ってどうやってロールプレイするんだろうなあ……