家帰る

sasakisaki
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先週ちょっくら入院した。そして退院した。退院する際に、医師から『しばらく自宅内活動くらいね』というお達しが出たのでここ3日実家に戻ってきている。医師の指示という名目があるので大手をふるってだらけている(療養している)わけなのだが、あらこれがなんだか思っていたより心地が良い。

朝起きる。食事がでてくる。新聞を取るのは私の習慣だったからなんとなく取りに行くけど、もう父が取っている。昔は休日は昼まで寝ていた父だが、彼も歳をとってずいぶん朝型になったらしい。トースト半分、バターにはちみつ。『紅茶でいい?』と母が聞く。私は苦いコーヒーを長らく飲めなかったから。今は飲めなくはないけど、紅茶にしておこう。庭に出る。母が綺麗にしている庭だが、最近は父の野菜コーナーも追加されている。

私がいた家だが、もう私が毎日いる家ではない。帰ってきても、私はお客さんである。目的なくだらける私は、もうこの家には存在しない。

しかしこの3日間、『用もなくここにいる私』が復活した。思えば働き始めて実家を出て以来、仕事人でもなく、先輩でも後輩でもなく、上司でも部下でもなく、友人でもなく恋人でもない、"何者でもない"自分でいるのは何年振りのことだろう。強いて言えば『両親から生まれた子である』くらいか、今の私につく肩書きは。

私が来たことで、母は張り切って料理を作ってくれる。父は私の好きそうな番組を録画しておいてくれた。姉も来て、私の暇つぶしに付き合ってくれている。まじで何もしてないけど、私はここに存在していてもいいらしい。この歳になって、家族のありがたみを今更噛み締めている。