自選十首_2023

sataka nakamura
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アルストロメリア短い春だからあるすとろめりながらさよなら

落花生二人で剥いて諦めた夢の話をとめどなくする

宵闇をコイン精米所が照らす(ナイトホークスみたいな光)

部屋隅のブラックキャップが真ん中に集まっていく 誰の祈りだ

渇望と絶望の差がわからずにやむなやむなやまないで時雨

召集が電子化された未来でもそれを赤紙と呼ぶ子供たち

本当の拍手は久しぶり過ぎてこんなに痛かったっけてのひら

電線を地下化しましょうつらいときキリンが走り回れるように  

僕は僕のレールに沿って眼鏡屋へ路面電車は港のほうへ

でかでかとクレッシェンドを一つ書くそれだけなんだライフプランは

中村佐貴

@sataka
本を読む。本以外も読む。稀に短歌を詠む。夏の終わりに駆除した蜂の巣の蜂がまだベランダで生きている。