いいもの読んだら布教するんだ

さとえ
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歳の差幼なじみの愛の話。特別でいちばん大事で何でも分かっているけど恋愛じゃない。だけど二人の認識と気持ちにズレができてきて、恋愛じゃないと思ってるけど、じゃあなんなのかわからない。そもそも二人の関係性に名前をつけることに意味はあるのか。変わりたくなかったのに変わってしまった。ただ一緒にいたいだけなのに、自分の気持ちも相手のこともわからなくなってしまった。これから自分たちはどうなりたいのか?どうしていくのか?

というような話を単行本三冊にわたって描かれてました。出来事と事実と結論だけを述べれば三行で終わるようなことを、丁寧に丁寧にかたちづくって二人が出した答えへと昇華していく。この読み味は好き嫌い分かれそう。身も蓋もなく言ってしまえば劇中の、「結局◯◯か」ってなっちゃうから。でもそこに至るまでの過程のお話だからね。

人が何かを飲み込んだり納得したり、答えや結論を出すときって他人には見えない心と頭の中で実にいろんなことが起こってるじゃないですか。そういうのを誠実に描く作家さんだと感じた。

人と人が愛し合うとき、相手と自分は同じでなくてもいいし、すべてを分かっている必要はないし、二人は別の人間で分からないこともあるけれどそれは決して淋しいことじゃない。二人が一人であることを思い出して自立する物語でもあったのかな、と今思った。傑作です。

@satoe1981
ひとりでしずかに書いてます。 potofu.me/satoe1981