落下の解剖学(原題:Anatomie d'une chute)/監督:Justine Triet

satosansan
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落下の解剖学は、小島秀夫が絶賛してたから見に行くことにした。あとは邦題が好き。何か賞とかいっぱい取ったらしい。

ミステリーみたいな顔をして事件の真実について答え合わせがはっきりしないのが印象的だった。作中で一応の結論は提示されるものの、実際これが真実ではないんだろうなと観客に思わせるようにできている。

決定的な証拠を出ない中、決着をつけたのは容疑者の息子のダニエルだったけど、この物語は観客がオチをつけたって良いって話だったように思う。主人公のサンドラが旦那のサミュエルからアイディアを拝借して小説を書いたように、観客も本作で提示された情報をもとに事件の真実を創作してみてくださいと言われているようだった。

自分がどう思うか?と言ったら、ダニエルがめちゃくちゃ嘘をついていると思っている。

時系列でいくと、

  • ダニエルは窓の下で夫婦の口論を聞く。

  • 殺人容疑を母親をかばうために窓の下での目撃証言を行い、口論ではなかったと嘘をつく。この時点でサミュエルは事故死だと思っている。

  • 現場検証で矛盾が出て来たので「家の中で会話を聞いた。口論ではなかった。」と発言を変更する。

  • 法廷で明かされる真実から、徐々に母親による他殺を疑い始める。

  • 母親が犯人である可能性に気付いたため、ダニエルは取り乱し、母親と距離を取る。

  • ダニエルは父親とのエピソードをでっち上げて母親を無罪にした。

  • ダニエルは心のどこかでサンドラが犯人だと思っているので、最後の会話で母親を怖いと言う。

というふうになったのかなと思った。

本作がウザくて良いよなと思うところは、結局サンドラが殺したんでしょ?って観客に思わせるのと同時にそのことを批判してるところだった。後半のテレビ番組のシーン。自分も例のごとくサンドラが殺したと思ってたから、急にぶん殴られて鳩が豆鉄砲を食ったよう。客観性保つの無理すぎワロタである。

無罪確定後のエピローグの長さも良かった。サンドラが打ち上げでボロを出したり、帰宅後にダニエルから何か真相の告白みたいなものがあるかと思わせといて何もない。全然普通に眠りにつくし犬は可愛い。