安倍晴明が陰陽師になる前の話。公開から3日間で観客動員数が18万人、興行収入は2.5億円らしい。ヒットしているようなので、見に行った。原案にあたる陰陽師シリーズを読んだことはない。
タイポグラフィを絡めた時代背景・設定の説明は、視覚的に分かりやすくて良い感じだった。今、何の話をしていて何がキーワードになるのかがスッと頭に入る。陰陽寮の作りも上々だった。作り物っぽい感じがなくて違和感なく見れた。
安倍晴明は、出世欲がなく厭世的で不遜な物言いをする人物であり、やたらと「俺は客観的事実を言っている。」というような発言をする。そのせいで、ひろゆきに影響されて自分の事を賢いと勘違いした意識高い系の大学生のようで、ただただ感じが悪かった。オンラインサロンとか入ってそう。
また、万人に分かりやすいような脚本作りをしていたのか、言葉遣いがところどころ気になった。特に気になったのは、源博雅と帝の会話シーンである。帝が安倍晴明について尋ねた過程で、取り巻きの女御たちに安倍晴明が陰陽寮で起きた犯人なのではないかと疑われてしまう。その際、清明を侮辱されて憤慨した博雅は思わず激昂してしまい、声を荒げたことに対して帝に謝罪をする。その際「すみません。」という言葉を使うのだが、社会に出たての新卒じゃないのだから、帝に対して「すみません。」はないだろとかなり違和感をおぼえた。もしかしたら、観客が敬語を理解できないと思っているのかもしれない。
源博雅の恋愛描写にかなり尺をとっていたのも、何か邦画っぽいなと思った。本作は、安倍晴明が呪術を使用したアクションシーンはかなり少ない。別に大きな不満ではないのだけど、その尺を削ってまでこれはやるだったのかっていう疑問が鑑賞後に浮かんだ。呪術のシーンは全体的に出来が良かったのでもっと見たかったなあという感じである。「陰陽師0」というタイトルなので。