Challengers/監督:Luca Guadagnino

satosansan
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公開:2024/6/15

チャレンジャーズはトレイラーで映った2人のテニスプレイヤーが1人の女性を取り合うような構図がセンセーショナルで面白そうだったので、見た。調べていくと、脚本のJustin Kuritzkesは、Past Livesの監督であるCeline Songと夫婦関係にあることも話題になっていたようだ。

タイトル通り、チャレンジャーツアーのある1つの試合と、そこに至るまでの10数年にわたった三角関係の話だった。その試合から物語は始まり、3人の出会い、交際、結婚に至るまでの過去が語られながら、チャレンジャーでの試合がどんな意味を持つのかが少しずつ紐解かれていく。

タシ・ダンカン自身が「テニスとは人間関係である。」と語っているように、本作は3人の関係をテニスの試合を通して描写している。冒頭は、1人のヒロインを賭けた2人のテニスプレイやのプライドのぶつかり合いに見えるのだが、物語を通して彼らの関係性の理解が進んでいくと、この試合が描いているものがそうではないことが分かってくる。

パトリックとアートは、コートに立っている相手を見ているのであって、観客席に居るタシ・ダンカンを見ているのではない。パトリックとアートが矢印を向けているのは、コートで対面している相手であって観客席に居る部外者ではないのだ。

これは、3人が初めて出会った日の性行為とも重なる。前戯中にヒートアップしてタシ・ダンカンそっちのけでキスをし始めるパトリックとアートと、それを鑑賞して不適な微笑みを浮かべるタシ・ダンカンという奇妙なシーン。あの夜の続きを描いているのがテニスの試合ということだろう。

タシ・ダンカンは「私の目的は最高のテニスの試合を見ること。」と語っているため、そもそもこの試合を画策したようにも見えるのも面白い。性愛や友情とも違う何か深い繋がりを感じるパトリックとアートを焚き付け、この試合を演出したのではないか?と私自身も思っている。

2人が分かりあったあとのタイブレークのシーンは、まさに最高の試合と言って差し支えない迫力がある。ラストにタシ・ダンカンは興奮のあまり絶叫するのだが、スクリーン越しに試合を目撃した自分も同じ熱狂に包まれていた。タシ・ダンカンと自分が物語を越えて感動を共有できたという感覚があり、それが何より爽快だった。それもまた関係性だなと思う。