ガールズバンドクライ 第1話~第8話/原作・企画・製作:東映アニメーション

satosansan
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公開:2024/6/22

ガールズバンドクライというアニメが話題だったので見てみた。いくつか違和感をおぼえた箇所があったので、それを列挙する。

失踪する河原木桃香のファンたち

本作は、河原木桃香が音楽活動に行き詰まり、引退をしようとしたところから始まる。

林:今はインディーズ時代のダイダスを目指すことだね。あの子たちは地元に居た頃のフォロワーは常時1万近く。それで事務所の目にもとまったんだから。

引用元:第6話 はぐれ者賛歌

ダイヤモンドダストは10,000人フォロワーを抱えており、高校生バンドにしては相当な支持を得られていたようだった。どうやってそこまで稼いだのだろうか。SNS戦略が上手かったのか、メジャーレーベルが絡むような有名なバンドコンテストで優勝したのか、Tiktokでめちゃくちゃ流行ったのか。

それはさておき、そこまでの人気バンドのフロントマンだった彼女が脱退後、路頭に迷うというのは釈然としないものがあった。ELLEGARDENじゃないという理由で、エルレファンがthe HIATUSには誰も見向きもしなくなったような状況である。ダイヤモンドダスト時代に居た10,000人のフォロワーはどこに行った。記憶をなくしたのか?

一方で、売れなかったという設定の割に河原木桃香の知名度自体は高かったようで、第5話で行った川崎セルビアンナイトのライブでは、河原木桃香とダイヤモンドダストの名前を出したことでソールドアウトしている。無名のバンドだけで300人のキャパシティのライブハウスでチケットが捌けきるとも思えないので、河原木桃香の名前に反響があったものと思われる。やっぱり人気があるのか?

かと思えば、第6話では新川崎(仮)のフォロワー数は500人になっている。人気があるのかないのかはっきりしてほしい。

燃え盛る新ダイヤモンドダスト

ネットで人気を博したことで事務所から声が掛かったダイヤモンドダストは、メジャーデビューのチャンスに恵まれるも、河原木桃香がレーベルが提案した方針に賛同せずに脱退。元々彼女が作曲を担当していたため、残ったメンバーに新ボーカルを加え、作曲担当が変わった状態でデビューしたことになる。かつ、レーベルの方針でアイドルバンド路線での売り出しが行われた。

何か変じゃね?

例えば、RADWIMPSがメジャーデビューした瞬間に野田洋次郎が居なくなって全然違うテイストの曲を知らん奴が歌ってたら困惑するだろ。作中で新ダイヤモンドダストが音楽性が変わったって叩かれているって話が出てくるけど、そういう次元の変わり方じゃないでしょこれ。インディーズ時代のファンに中指を立てすぎてて、残ったダイヤモンドダストのメンバーがこの作品で1番ロックまである。

この売り出し方について、残ったメンバーは以下のように考えているようだ。

メンバーその1:(桃香に対して)バンド始めたって聞いたよ。楽しみにしてるから。

メンバーその2:私たち、後悔してないから。

メンバーその3:これで上まで絶対行くから。

メンバーその1:間違ってなかったって言ってみせるから。それまで絶対生き残ってやるから。

引用元:第8話 もしも君が泣くならば

いやいや。

結果的に売れたからって熱く語ってる場合じゃないって。後悔してるのは君らじゃなくてかつてダイヤモンドダストが好きだったファンの方だって。売れ線でバンド活動を続けるのは勝手だけど、バンド名は今すぐ変えなよ。

バズり散らかすトゲナシトゲアリ

第6話にて、新川崎(仮)は22,000人のフォロワーをかかえるユニット、beni-shougaの2人が加入してバンド自体のフォロワー数も27,000まで伸び、トゲナシトゲアリに改名。活動が軌道に乗り始める。新ダイヤモンドダストのフォロワー数は第6話時点で20,000なので、第8話時点でフォロワー数は並んでいる。トゲナシトゲアリの方が多い可能性すらある。

仁菜:事務所ってそんなに大切なんですか?

林:まあね。曲発表するだけならネットで事足りるけど、タイアップだプロモーションだって話になるとね。

引用元:第6話 はぐれ者賛歌

事務所の強みはどこに行った。何で半年で並ばれてるんだ。もっとプロモーションしろ。


第8話まで見てとにかく気になったのは、フォロワー数を人気の指標として使用しているにもかかわらず、めちゃくちゃ雑に設定されていて、それによって矛盾が発生していることである。

炎上確実なメジャーデビューをした新ダイヤモンドダストがなんやかんやで人気になっているのは、その後、頑張ったんだろうで目をつむるにしても、トゲナシトゲアリがかなりおかしい。

第8話時点での、トゲナシトゲアリの状況は以下である。

桃香:仁菜が言っているのがどれだけ無謀か、すばるだってわかってるだろ。しかも、インディーズデビューすらしていないバンドが。

(BAYCAMPの最終選考通過のメールを見せながら)

すばる:この前のフェス、通過した。それと、ルパさんのところにも、レーベルから興味あるって連絡きてる。嘘みたいに思うかもしれないけどさ。桃香さんはさ、元ダイヤモンドダストなわけでしょ。智ちゃんもルパさんも、ネットで結構注目されていた謎の2人組。更に仁菜の声はこの前どっかのボーカルが良いってつぶやいて、軽くバズった。

桃香:本当か?

(383フォロー、27,871フォロワーのSNSのページを見せながら)

すばる:フォロワー、もうこんなに居るし。今度のライブのアンケだって、私ら目当てのお客さんが1番多い。

引用元:第8話 もしも君が泣くならば

井芹仁菜と河原木桃香が出会ったのは3月、第11話のBAYCAMPは9月なので、長く見積もっても結成から半年の間にフォロワー数が27,000人まで伸びていることになる。そして、BAYCAMPのオーディションを突破してフェスの出演まで決めている。また、インディーズデビューすらしてないので、楽曲はリリースされていない。現実でこんなバンドを見たら裏に事務所ついてるんだろうなと、インダストリープラントを疑うだろう。

おかしなフォロワー推移に目につむるとしても、トゲナシトゲアリが伸びている事実は、本作が掲げるテーマの1つである「メジャーの商業主義に対する批判」と噛み合っていない。

音源のリリースを行っていないバンドが人気を伸ばすのと、売れ線の音源をリリースして大衆から支持されるのとどちらが健全かと言われると、どう考えても後者である。本当に良い音楽は評価されず、売れ線音楽がはびこるシーンに中指を立てるというテーマの中で、土俵にも立ってもいないトゲナシトゲアリのメンバーがごちゃごちゃ言ってるのはお門違いである。御託を並べる暇があるなら音源をリリースして曲で勝負しろと言う話でしかない。