先日、漫画家の訃報を見かけた。ドラマ化に際して、原作が意図しない作りになったことを発端とした脚本家とトラブルが事の始まりらしかった。
訃報を見て思い出していたのは青山景という漫画家のことだった。彼は2011年10月9日にこの世を去った。
自分が青山景の漫画をはじめて読んだのは2012年の1月のことである。大学進学にあたって上京していた自分は、正月に帰省していた。家族との交流も済ませ、東京に帰る前に地元の本屋で帰り道に読む漫画を選んでいた。その時、平積みされていたのがストロボライトとよいこの黙示録だった。平積みされていたのは、この世を去った彼に対する追悼だったのだろうが、当時の自分は彼の訃報はおろか存在さえも知らなかった。よいこの黙示録は「小学生が宗教を興す」という内容が面白そうだったから買い、ストロボライトを買ったのは単純に装丁が好きだったからだ。
新幹線の中でまずストロボライトを読んだ。主人公は大学生で冒頭で夜行列車に乗っていて、不思議なリンクを感じた。ストロボライトは当時の自分には少し難しいように感じる作品だった。というか話の内容を理解できていなかった。度々読み返して、後々大好きになった作品である。
主人公が見ていたのが「町田ミカ」だったのか「桐島すみれ」だったのか「加藤ユキ」だったのか、というところは、VTuberとかロールプレイに馴染みのある今の子にとっては、とっつきやすいテーマのように感じる。それは、先日の廻花や最近流行りのストグラにも繋がるものでもある。
よいこの黙示録は、素直に売れそうだなと思い、SNSに「面白い。次巻も楽しみ。」と無邪気な投稿をした記憶がある。最終巻となった2巻にプロットなどが書いてあったのだが、深く考えず読み飛ばしていたため、その意味に気付くことはなかった。
当時の事を覚えているのは、その投稿に出版社の人からリアクションがあったからである。稀な出来事だったので不思議に思っていた。
1年くらいたって中々新刊がでないことを不可解に思って調べてはじめて3巻が永久に来ないことを知った。これまでの色々が「ああそういうことか。」と繋がっていった。
改めて2つの作品を読み直したが、やはり面白くて、もう新刊を読めないのは寂しいと感じる。よいこの黙示録3巻が出版される世界線に行けるものなら行きたい。
青山景は享年32歳だった。自分はいつの間にか彼を追い越してしまったらしい。自分も長く生きているのだなと思う。