お茶碗一杯ぶんの文章

satsuki
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すこし前に、日記ともだち(勝手にへんなともだちのジャンルを作るな)のひとが、私が書いているこの日記のようなものの文章を「お茶漬けみたいな文章」と表現してくれて、私は自分の文章をお茶漬けにたとえられるのははじめてだったので、新鮮で、なんだか不思議な気持ちになりました。お茶漬け、久しく食べていないな。昔は大好きで、朝ごはんとか小腹がすいたときにによく食べていましたね。永谷園のお茶漬けのもと(わさびが好き)に、さらに焼き鮭をひとかけのせて、お湯でもいいとは聞きますがちゃんと熱いお茶をかけて食べるのが一番好きでした。書いてたら食べたくなってきた。

ちょっと疲れている時でもさらさらと入ってくる優しい文章、という意味合いで言ってくれたみたいで、その評価はシンプルに嬉しかったです。なんだかんだで文章を褒められると嬉しくなってしまう。おもしろい文章の評価基準は人それぞれだと思うのでむずかしいのですが、読みやすい文章、というのはある程度共通した評価基準の存在する、つまりは技術の話だと私は考えているので、多少なりともそれが自分に身についていればいいのにな、という気持ちは常にあります。しっかりした文章修行みたいなことをしてきた経験があるわけじゃないのに技術を身につけていたいというのもおこがましい話ではありますが、人生のまあそれなりの時間を、だいぶ好き勝手にとはいえ、読み、書くことに費やしてきていながら、それらの時間が経験としてなにひとつ身についてはいない、と考えるのは悲しいので。

ところで私はこの文章をすべてスマホで入力しています。

しずかなインターネット、PCブラウザから入ると、文章作成時のムードというものが選べるらしく、エディタの背景などの雰囲気を気分によって変えられるそうです。はじめた当初からすごく気になっている機能ではあるのですが、いかんせんうちには動くパソコンがもうないし買う予定もない。ムードに合わせた文章を書く、みたいなことは今後もたぶんできないでしょう。スマホ版の入力画面は、白背景に濃い灰色の文字の、無駄なものはぜんぶ削ぎ落としたみたいなシンプルさで、これはこれですごく良い。それこそムードに流されず、自分の書きたいことを自由に書くことを許してくれるまっさらな感じがある。

文字数カウントなどもないです。ひとつの記事に収められる文字数の上限はいちおうあるらしいのですが、そこまで書いたことがないのでどんなふうにストップがかかるかはわからない。同人誌などを作っていた時は、自分がこのエディタに向き合いはじめてからいったい何文字書けているのか、今この文章は合計で何文字に達しているのか、みたいなことがわりと重要で、文字数カウントはテキストエディタの必須条件ぐらいに思っていたのですが、最近は、字数に縛られずに自由に書けるというのは、それはそれで、とても気楽でとてもいいものなんだなぁという気持ちです(これは、長く書いてもいいというよりは、短くてもいいという安心感だと思う。本にするとなると最低何文字は必要みたいなラインがどうしてもあったので。短編集ならひとつひとつの話の長さはそんなに重要ではないかもしれないけれど、この長さの話ならあと何本ぐらい書かなければならない、みたいな気持ちを常に抱きながらの作業になるので結局おんなじなんですよね)

そんなふうにのびのびと書いた結果として、私がここに書き置いている文章はおおむね2000字とちょっと、ぐらいの文字数になっていることが多いな、ということに先日気付きました。特に目的や伝えたいことのないちょっとした文章を書く、ということは私にとってはたぶんぜんぜん苦ではなく、だからなんとなくここの更新も続いているんだろうなぁと思うのですが、その「自分が気負いなく、無理なく、何気なく書けるちょっとした文章」というのはだいたいそれぐらいの長さなんだなぁ、という今さらの気付きですね。

2000字よりはだいたい多い。2500字を越える日はすくない。400字詰め原稿用紙に換算するとだいたい6枚ぶんぐらい。お茶漬けみたい、と言われたのでそういうたとえかたをすると、それが私のお茶碗に入るちょうどいい軽めの一杯分、の文章量ということになる。逆に、原稿用紙6枚ぶん、をすこしはみだしてしまっている文章は、明確に書きたいことがあったり、言語化がむずかしいことをなんとか言語化しようとがんばっていたりと、気負いなく、無理なく、の範囲をすこしはみだしている文章なんだろうな、みたいなことも考えていました。たぶんそこそこ時間をかけて書いている文章は、やっぱりちょっと長くなっている。旅行の記憶はまた別ですが。

書くということを意識する、という意味では、ちゃんと時間をかけて考えて、ちょっと無理して書くほうがいいに決まってるとは思うのですが、そういう目的とか着地点とか深く考えず、ぼんやりとすべりだしてなんとはなしに閉じていく、こういう文章のほうが書くのは楽しいのかもしれない。なんだろう、気分転換にちょうどいい、みたいな。私にとってはちょうどいいけれど、読んでくれている人にとってはどうなんてしょうね。せっかくならば、ほどよく時間の隙間に読めて胃にもたれない、それぐらいの軽い文章であればいいなぁと思います。