ただただ好きなものの話をします

satsuki
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3年弱?ぐらい前からゆるくゆるく、STELLAnotesというひとたちとその音楽を追いかけています。3年経つかな? たぶんまだ経たないかな? とか、それぐらいの時期からのはず。知ったきっかけというか経緯というかはまあそこそこにややこしいんですけど、これはVTuberのボーカルのひとと、VTuberではないメインの楽曲制作及びギターのひとが基本ふたりでやっているバンド(知ったときはユニットと名乗っていた)で、先日活動開始から5周年を迎え、5年のあいだに、デジタルシングルを10作と、物理の盤があるアルバムを2枚リリースしている。5年で2枚のアルバム、というのがバンドとして精力的な活動なのかは意見が分かれるところかとは思いますが、おふたりがどちらも専業で音楽だけやっているわけではない、ということを考えるといっぱい活動してくれててありがたいと思うし、アルバムをちゃんとCDとして販売してくれているのもありがたい(デジタルリリースやサブスクもある、これもありがたい……) 拝みながら活動を応援しています。あくまでゆるく、なんですけど。

すこし前にここで、仕事をしながら好きなこととか趣味を続けるのって本当に大変だと思うみたいな話をしたのですが、その時あたまのなかの8割ぐらいを占めていたのがこのひとたちのことで(残り1割は同じ記事で話題にしていたサウスケのひとたちのことで、もう1割は身近でばりばり働きながら全然オタク活動やめてないともだちとかのことなんですけど)このバンドのおふたり、VTuberの人はもちろんまあVTuberなので音楽以外のいろんなこととかもやっていて、VTuberではないほうのひと(この言い方はどうなんだ?)はおそらくそこそこ激務の会社員をやっている、のですね。で、こないだもうすぐ5周年だからってことでスタジオライブの映像公開があってその後に雑談配信もあって、ギターのひとはそのなかであくまで仕事は辞めないままできる範囲で続けるっていうのは最初から決めていたみたいな話をしていて、私はそれを聞いた時もなんかこう、すごいなと思っていたのでした。仕事をしながらやりたいことも続けるのは本当に難しいしすごいことだ、という気持ちがあるので。

ちなみにボーカルのひとは対照的に、と言っていいかはわかりませんが、自分の好きなこと、やりたいことで身を立てる、ということにものすごく全力で貪欲な感じがある。それはそれで大変なことで、すごく気力のいることだろうから、やっぱりすごいなぁと思いながら見ている。なんかよくわかんないけど見てて元気出るしね。やりたいことを、やりたいという情熱だけで続けられるということに私はたぶん憧れを抱いていて、そういうひとが多いインターネットを眺めていると世の中って捨てたもんじゃないなという気持ちになる、とか書くとちょっと大袈裟でしょうか。とにかく、そんな感じに人生の方針みたいなものも、生活サイクルも忙しさの質も、たぶんぜんぜん違うだろうひとたちが、5年もこういう形の活動を続けている、ということだって簡単なことではないでしょう、たぶん。だからそれもすごいなぁと思う。

続けてくれていてすごい、といった直後にこの話をするのはあれなのですがしかし、私がはじめてこのひとたちの音楽を聴いたときはそんなに続くと思っていなかったし、なんなら活動が続いているということも知らなかった。当時の時点で最初のアルバムのリリースから一年ぐらい経ってたぐらいかな?と思うんですけど、アルバムリリース以降のおふたりでの活動というのがぱっと目に入る範囲ではなくて、ボーカルのひとはVTuberなので個人だったり所属してるグループだったりで活動自体はめちゃくちゃしている(あと歌みたとかもめちゃくちゃ出していた、出していたかな? 当時の時点で既にすごい量はあった)ということはわかったけど、ギターのひとに関してはそもそもインターネット上で今活動しているかもよくわからなかったですし(私は好きな作家とかミュージシャンのSNSを追いかけることに結構ためらいがあるタイプなので積極的に探していなかったことも理由のひとつではあります。いろいろあって……人格知って嫌いになりたくないが先行していて……)

私はおたくなのですぐおたくに引き寄せた考え方をしますが、同人やっててもお互い作品好きで意気投合してじゃあ合同誌とか出しましょう!てなることはままあれどだいたい一冊出したら楽しかったねーで解散しておんなじ面子で何度も出せることってあんまりない。だからそういう形態で生まれた一回限りのユニットなのかなぁみたいに思っていた。当時は彼らの自認もユニットでしたし……。


すこしだけ、話がそれることを許してほしいのですが、最果タヒの『空が分裂する』という第2詩集のあとがきが私はたまらなく好きで、好きな部分を引用しようとすると全文引用しなければならないことになるぐらい好きなのでいまは大変雑にまとめてしまうんですけど、インターネットという、誰にとっても気安く作品を発信できる場所ができたことで、本来は選ばれた一握りの人しかなることができなかった「作る人」の側に誰もが気軽に立てる時代になって、結果としては人生のなかのほんのわずかな期間気まぐれに「作る人」であったような誰かが残した、本人すら作ったことを覚えていないような作品にも私たちは触れられるようになった、そのことがとても嬉しい、みたいな内容が書かれている。私は何かを作るということにそれでもどこかしら神聖というか切実な何かを求めてしまう側の人間のような気もしますが、それでもこの言葉は、はじめに読んだときからずっと頭のどこかにあるような気がします。だってたしかに、そうやって残されたほんの数編の作品のきらめきに、場合によっては救われる人がいるのかもしれない。家族に、クラスに、社会に、あるいは世の中で良いと絶賛されている作品にうまく同調できなくて、なじめなくて、なんとなくよるべない気持ちを抱えた誰かの胸に、ずっと昔に放置された古いブログのさりげない一文がどうしようもなく刺さってしまうことはきっとあり得る。

大昔にものすごく好きだった小説サイトがあります。作者の方の名前も具体的にそこにおいていた小説の内容もほとんど覚えていない、私がたどり着いた時にはもうほとんど更新の止まっていたサイトに置かれた一連の作品が私は本当に好きだった。その人が創作をやめたのか、それとも別にそんなことはなくただぜんぜん別の場所で何かを書くことを続けていたのかはよくわかりませんが、インターネットを通してしか出会えなかった作品が、人生の一時期においてテレビや本屋やCDショップや、いろんな商業的作品のステージで出会えるどんな作品よりも自分にとって大切なものになる、ということは、だからぜんぜんあると思うのです。多くの人に広く好感を抱かれる親しみやすさ、あるいは圧倒するような凄みみたいな、それこそ「選ばれた人」の才能だけに価値があるわけじゃなくて、どこか自分に似た一握りの誰かにしか届かない、だけど確実にその人たちの助けになるような囁きみたいな作品が、きっとこの世の中には間違いなく存在する。


これはだいぶ個人的な話ではあるのですが、彼らを知った3年ぐらい前というのが、私にとってはいろいろあって(なんかそればっかりだな)なんか精神的にものすごく傾いていた時期なんですけど、そういうタイミングで耳にしたこの最初のアルバムに当時けっこう元気をいただいた。なんだろうな、人がなんらかの創作物に救われるときって本当に一方的に勝手に救われちゃうみたいなところがあると思うんですけど、そういう救われ方を、たぶん久々にしてしまったなぁという感じだったんですよね。だからこのユニットの活動の軌跡がこのアルバム1枚でも当時はぜんぜん構わないなと思っていて、彼らの経緯も現状も何も知らないけれど、すくなくともこうやって1枚のアルバムというかたちで作品を残してくれていることに感謝したいなみたいな気持ちでたぶんほんとにめちゃくちゃ聴いてた。結論から申し上げれば彼らの活動はぜんぜん終わってなくて、その後とあるタイミングで彼らはまたばりばり活動するぜー!みたいに宣言してほんとにばりばり新曲をだして、去年のちょうど今頃に2枚目のアルバムも出て、5周年でも新曲が出たしなんなら来月も出るし年末には配信ですがライブもあるのですが(楽しみ)

5周年のときの雑談配信で、曲を作っているギターの人は、ギターを弾くのは好きだったけれどこの活動をはじめるまで自分で曲を作ってみようとは考えたこともなかったし、はじめてからもしばらくは、こんなに世の中にたくさん曲があるのに自分が作ることに意味はあるのかみたいに考えていた、みたいな話をしていました。でもそんなふうに考えながら作られていたらしい音楽は、すこし昔の私にとって、あのときあのタイミングで出会えてよかったと思える、意味のある音楽だったのですと、その時だけはさすがにちょっと伝えたい気持ちになった。どんなに世の中に作品が溢れていても、自分が作るものに価値が見出しにくくても、それが生まれてこの世に放たれるということにはいつだって意味があるのだと思いたい、というのは、もう彼らのこととは関係なく、ただ何かを作る人になりたかった私の祈りみたいなただの感傷なんだとは思うのですが、その日は配信が終わってからもずっとそんな事を考えていたのでした。


ちなみにこのボーカルの方のVTuberのひとが私が今ゆるく追ってる配信者グループの一員でもあり、というか順序としてはこの人がいたから私は結局ゆるくとはいえ13人もの配信者を追っかけるはめになったともいえる。いや楽しんでいますが。結果としておかげで毎日なんらかの楽しみがあるみたいなところもあるからそういう意味でも感謝してるのかもしれませんね。もはや恩義。しかし恩義まで行くとさすがに重たくて嫌だなぁと自分でも思うのであくまでゆるいファンですというスタンスを崩さずにいく所存です。ゆるいファンだと主張させてほしい。