8/1は母の誕生日で、母の誕生日には毎年地元で大きな花火大会がありました。いや、地元というのはかなり嘘だな。当時住んでいた家からだと、会場まで見に行こうと思えばたぶん平気で1時間ぐらいかかる場所ではあった。それでもその花火大会が私にとって「地元の」花火大会であった理由はひとつで、単純におうちの窓から見えたからです。
そこそこに高台にある集合住宅が当時暮らしていた家で、ちょうどこども部屋の窓から見える方向に花火が上がっていました。序盤の花火は低い位置に上がることが多いので音しか聞こえないのですが、中盤以降は案外きれいに見えたし、たぶんフィナーレがけっこう有名な花火大会だったんじゃないかと思うのですがそれとかもめちゃくちゃしっかり見えた。いやあの花火大会のフィナーレは特に見ようと思ってなくても地域一帯の空が明るくなるぐらいだったので、窓の方向さえ合っていればたいていの家からきれいに見えたのかもしれないですが……だから別にうちだけではなくあの辺に住んでいる人たちはみんなおうちから見ていたんじゃないかな? わからないけれど、すくなくともうちでは、母の誕生日はみんなでこども部屋に集まって花火を見る日でした。花火を見ながら、こどもはケーキを食べていたしおとなはビールを飲んでいた。楽しい夏の夜の思い出です。
ずっとそんなふうに過ごしてきて、つまり花火大会は家から見るものだと思っていたので、高校生になってからおともだちにその花火を「見に行こう」と誘われた時にはちょっとだけびっくりもしたのです。だって、別に見に行かなくても見えるじゃん。でもそれ以上にわくわくもした。私はこどもの頃本当に、こどもだけで、しかも夜に出かけるなんてことをめったにしないこどもだったので、そもそもそんなことしていいんだ!という気持ちもあったし、花火イコール母の誕生日でもあったので、家でお祝いとかしなくていいのか!?という気持ちも当時はすこし、あった気がする。
最初にも書いたのですが、おうちからちゃんと向かおうと思うと平気で1時間ぐらいはかかる場所が会場でした。私は高校も自転車通学だったので電車には慣れていないし、アルバイトをしていない高校生にとっては電車賃も大金です(いちおう部活をしていたのでアルバイトの時間はなかった、校則的には禁止だったのかな? 許可制だったかな……自分も周りも誰もやってなかったからそのあたりはうろ覚えです) なにより誘ってくれたのは高校に入ってからのともだちで、私は通っていた高校も高台にあり、高校の近くにはちょっとひらけた空き地があり、近くの人たちとかそれこそ通っていた高校の生徒とかはみんなそこに花火を見に行っているという話でした。だから、みんなでそこに行こうよ、みたいなことを約束したのです。たしか自転車で集まったんじゃなかったかな? コンビニでジュースとかも買っていって、おしゃべりしながらその空き地で場所を確保して。でも今こうやって思い返していると、その日見た花火のことってあんがいなんにも覚えていない。花火に行く前に立ち寄ったグループのうちの1人のおうちがめちゃくちゃでかくでびっくりしたこととか、花火終わって帰り道の下り坂をみんなでめっちゃ笑いながら全速力で駆け下りたこととか、そういうのが楽しかったな、ということはかなりはっきり覚えているのですが。
これはまったく別の会場の花火大会の話ですが、一度だけ、ちゃんと会場まで見に行った花火大会の記憶もあります。でもそれも、たぶん花火はものすごくきれいだったんだけどそのこと自体はあんまり覚えていなくて、場所取りの間ずっと暑かったなとか、帰り道があまりにも混んでいてぜんぜん動けなくてもうすっかり疲れてしまったとか、そういう記憶しか残っていない。あとはちゃんと会場に行くとめちゃくちゃ音がでかいとか、火薬の匂いがけっこう強くてびっくりするとか。そりゃああれだけの火薬を燃やしているので当たり前だし、それはたぶん会場に行かないと得られない実感だろうし、じゃあ体験しておいて良かったような気はしますが(あと花火も本当にきれいではあった、と思う)二度目はいいかな、とたぶんその時も思っちゃったんだよな。
打ち上げ花火は好きか嫌いかで言えば好きなほうだと思います。きれいだしはなやかだしわくわくする。でもたぶんそれ以上に、わざわざあんな苦労をするくらいなら別に映像でもいいや、になってしまう。私は自分のことを、けっこうな範囲のことをひとりでも楽しめるタイプの人間なのではないかと思ってはいますが、花火大会に関してはひとりで見に行く気にもあんまりならなくて、混雑した会場で花火を見上げることをどうしても、その苦労に見合う体験だとは見なしていない気がする。間近で見るのもそれはそれで迫力があっていいんだとは思うけれど、花火は遠くから見てもきれいなもの、なので。むしろすこし離れた場所から眺めたほうがきれいなんじゃないだろうか。さすがにそれは言い過ぎでしょうか。
そんなふうに考えるのもたぶん、自分にとっての花火の基準が、あの頃こども部屋から家族で眺めていた花火になってしまっているからなんだろうな。空調の効いた見慣れた部屋の中で、好きな食べ物を食べながら、のんびり眺めているぐらいが結局一番たのしい気がします。もちろんこれに関しては、思い出補正も大いにあるとは思うんですけどね。
今住んでいるところには、残念ながら窓から見える花火大会などは存在しないので、この先も私は一生打ち上げ花火を見ないまま人生を終えるのかもしれません。私にはもう、花火の見えるお家に引っ越すか、あるいは花火大会が見える宿に花火大会の日を狙って泊まるぐらいしか打ち上げ花火を楽しく見る選択肢が残されていない。後者には正直めちゃくちゃ憧れがあるのですが、めちゃくちゃ……めちゃくちゃ高いんだよな……いつか宝くじをあてた暁には実現したいなぁと思います……人生の目標かなぁ。