しずかなインターネット

日記やエッセイにちょうどいい
文章書き散らしサービス

ログイン

須磨離宮梅見散歩プラスアルファ

satsuki
·
公開:2026/2/15

すこし前に『USO 4』というエッセイ集を読みました。そのなかに収録されている旦悠輔さんの「私と嘘」という文章は、ものすごくざっくりまとめると東京での激務に疲れて力尽きた著者が逃げのびるようにたどり着いた神戸の土地でちいさな書店を開くに至った経緯について書かれたエッセイだったのですが、淡々とした文章そのものはもちろん、そのなかで名付けられた「自由港書店」という屋号がとても印象的だった。須磨海浜公園の近くに構えられたというその書店の名前をなんとなくGoogleマップで検索して、それが間違いなく須磨の地にあること、駅からも近くかなりアクセスしやすい立地であることを確認し、なんなら最寄り駅から須磨海浜公園前駅への経路まで調べた私は、ぜんぜん行けるじゃん、と思ったのです。

ということで、行ってきました。

最寄り駅は須磨海浜公園駅、すぐ近くには神戸須磨シーワールド。水族館もすごく好きなのでせっかく須磨まで足を伸ばすなら行ってみたいなぁとは思ったのですが、今回どうせなら季節的にも丁度いいしついでに梅見にでも行くか、という気持ちが生まれ、すこしだけ場所は離れるのですがついでに足を伸ばす先は須磨離宮公園とすることにしました。こちらの最寄り駅は月見山。神戸の海を臨む丘陵地に建てられた皇室別荘を前身とする都市公園、とのことで、おそらく最も園内が華やかになるのは薔薇のシーズンかと思うのですが園内には梅林もあります。私が行ったのは二月の中頃で、満開にはまだすこし早そうだったのですが早咲きの品種は見頃を迎えているとHPに記載があったのと、どうやら園内には蝋梅も植わっているらしいので今ならまだぎりぎり間に合うのでは……!と思ったのでこのタイミングで行くことに。

これは公園内ではなく月見山の駅前にある喫茶店で食べたミックスサンドと自家製プリン。このプリンがあまりにも理想的で完璧な喫茶店のレトロプリンのビジュアルすぎてどうしても食べたかったのですが(味も余分な要素が何もないシンプルなレトロプリンという感じですごく好みだった)ミックスサンドもおいしかったな。神戸のたまごサンドも厚焼き主流、かつその場で焼きたてのあつあつふわふわのやつを挟んでくれるイメージがあります。いやそんな一般化して語れるほど神戸の喫茶店でたまごサンド食べたことあるわけじゃないのですが。神戸の喫茶店巡りたすぎる。ちなみに、最初サンドイッチを頼んだはずなのにカトラリーで箸が出てきたことに???になっていたのですが、このサラダがつくなら納得だしフォークではなく箸を添えてくれるのも本当に優しい、と思いました。すてきなお店だった。

正門側から入ったら蝋梅ばばっちり咲いていて、ものすごくいい香りがしました。私はいまだに基本外出時はマスク装備なのですが、さすがに梅見にマスクは野暮すぎるな、になって園内ではずっと外していた。気持ちよかったな。

公園内は、薔薇園が中心の本園と梅林のある植物園エリアにざっくりと分かれており、シーズンということもあってか梅林のほうには結構人も多かったのですが本園はあまり人がいなくてぬい活もできました。ということで、私が蝋梅好きすぎるせいで蝋梅と記念写真を撮らされる推しとあまりにも枝ぶりが見事なクスノキ。薔薇園は結構な規模感のものがあちこちに点在していて、シーズンになると本当に凄そうだなぁと思ったので今度は初夏にも来てみたいな。あと藤棚があったり菖蒲園があったりあじさいや紅葉のエリアもあったので、たぶんどんな季節にきてもどこかしらが見頃なんだと思います。というか秋だと薔薇と紅葉どっちも見られるのかな……。

ここは秋に来てみたいなーと思ったもみじ滝。周りの木が全部紅葉したらさぞきれいだろうな、と思います。

梅林には菜の花や水仙も植わっていて素敵だった。あんまりうまく撮れなかったのですが、紅梅の鮮やかな濃いピンク色と菜の花のぱっと明るい黄色の取り合わせが好きです。気持ちまで明るくなる色合わせだ、と思う。梅は、咲いている品種とまだ咲いていない品種がくっきり分かれていて、やっぱり本来の見頃は来週以降なんじゃないかなとは思います。枝垂が全然咲いてなかったのでそれはちょっと残念だったかも。でも満開になったらもっと人多いのかもしれないのでそれ考えると落ち着いて見られて良かったかなぁ。

和庭園みたいなコーナーもあって、ここもまだ早かったんだけど満開になったらめちゃくちゃ素敵そう。

あとなんか温室があって温室内に妙に可愛いフォトスポットがありました。たぶんバレンタインだったからだと思う。


園内はのんびり散歩して小一時間くらいかな? あちこちにベンチスペースがあって、お昼時だったのでお弁当食べている方もちらほら見かけたのですが、どうやら園内でも売ってるみたいです、お弁当。いいなー。あとアスレチックコーナーなどもあり、お子さん遊ばせてるご家族の方とかも結構いて、のどかで良かった。また来たいなぁと思いつつも次の……というよりは本来の目的地である自由港書店を目指して移動。月見山と須磨海浜公園駅は路線が違うので乗り換え必須、かつ須磨離宮公園から須磨海浜公園までは徒歩でも20分程度で着くので、そのまま散歩の延長で歩いて向かいます。

ところで自由港書店のすぐ近くには「栞菓子店」という焼き菓子屋さんがあります。私はGoogleマップを眺めるのが趣味なので行く前にGoogleマップを眺めているときに知ったのですが、これまた店名が可愛らしく魅力的で、売ってる焼き菓子やパッケージもかわいくておいしそう。せっかくだからここにも寄るかーという気持ちで立ち寄ってきました。

そのちょっとした出来心から、クッキー缶とわりと正気を手放した量の焼き菓子を買ってしまったのですが後悔はしていません。可愛いしおいしかったから。海の近くの土地で、目の前に水族館もあるからだと思うのですが、くじらやぺんぎんといったうみのいきものをモチーフにしたサブレが、シンプルな見た目の焼き菓子の合間にちょこちょこと置かれているのが店内でもたまらなく可愛く、このクッキー缶も小さめサイズなのでまあまあお手頃、かつバラ売りの菓子類もそこまでお値段高くなくて、ご近所にこういうお店があったら嬉しいなあ、となってしまう素敵なお菓子屋さんでした。

それにしたって今から絶対に間口の狭い本屋さんに行くのに荷物を増やす愚かな女……と思いながら菓子屋の紙袋を下げて向かった自由港書店は、想像よりさらにちいさいお店でした。ただ、ちいさいお店ではあるんだけど雑然としていたりぎゅうぎゅうに本を詰め込んだような印象もなくて、廊下みたいな細長いスペースに、それでも一冊一冊表紙を見せて丁寧に本が並べられているお店だなぁ、という印象。お会計していただいているときの本の扱いも物凄く丁寧で、というかすべての動作が丁寧で穏やかで、あと店内がなんだか明るかった印象も残っています。品揃えとしてはおそらくZINE系と、詩歌と海外作者のエッセイとか評論とかが多めなのかな、と思いますが、一方で絵本とか児童文学もけっこう並んでいて、それが共存しているのがすこし不思議でなんだか素敵な場所でした。また行きたいので今回買った本読み終えたらもう一度足を伸ばすのもいいかなと思っている。その頃には薔薇が見頃になっているといいですね。

ということで買った本。USOはさすがに置いているだろうなぁと思って(寄稿しているぐらいなので)これを買うつもりでお邪魔したまであるのですが『夜明けと音楽』は店頭に置かれていた時の本の佇まいがあまりにも静かでうつくしくてどうしても欲しくなってしまって買ってしまった本。白くて静かでうつくしい装丁の本、ちゃんと向き合わないと失礼だしすぐ汚してしまいそう、という気持ちが強くどうしてもおそるおそるの読書にはなると思うんだけど、ゆっくり読みたいなぁと思っている。


本日の目的はこれで一応すべて果たしたので、ここから先は完全に余談。須磨海浜公園駅はJRの駅で、別にJRを使っても大阪までは帰れるんですけど、JRを使うのは諸々の事情により個人的にはあんまり便利じゃない。でも一度歩いてきた道をそのまま引き返すのって個人的にあんまり好きではなくて、それにせっかく神戸の海辺まで来ているのだからもうちょっとだけ散歩して帰るかなー、という気持ちもあったので、本屋を出たあとは海浜公園沿いの道を須磨の方まで歩いていました。そっちの方にも気になるお店があったのでお茶だけして帰ろうという魂胆ですね。徒歩でこれまた20分ちょっとかな? 一駅分ぐらい歩いて、そこから帰りに使いたい別路線の駅の方に針路を切り替え、そのお店にたどり着いて電車の時間までちょっとのんびりしていた。ちなみにそちらは線路沿いの住宅街にひょこんと紛れるように開かれた、一軒家をそのまま店舗に改築したようなこじんまりしたお店です。店内にいると定期的に電車が通る音がして、たぶん生活していたら気になる騒音なのかもしれないけれどカフェでまったり過ごす時間にかそれもちょっと趣深いな、と思えるようなこれまた素敵な店だったんだけど、そこでぼんやりコーヒーを飲みながら持参した本など呼んでいたら、不意に店員さんと先客だった常連さんらしきお姉さんがおしゃべりをはじめたんですよね。

「そういえば〇〇さんって自由港書店って知ってる?」

!?!?!?!?

「海浜公園の近くにある、ほら、栞菓子店さんの近くなんだけど……」

!?!?!?!?!?!?!?!?

わ、私は今まさにそのニ店舗の紙袋を抱えた状態でここに座っておりますが……?

その会話が本当にあまりにも唐突にはじまったので、まじでその後ずーっとなぜ急に? みたいなことを考えていて全然落ち着けなかったです。本当にたまたまなのか、あるいは私がそこの紙袋持っていたせいで店員さんが思い出したのか、そうだとすれば私はその会話に加わるべきだったのか。しかし私はお話している人たちには完全に背を向ける位置に座っていて急に混ざるのも不自然ではあり……こういうとき世の中の人ってどんなふうに振る舞うんでしょうね? いや、そもそも世の中でそんな事態に陥ることなんてそうそうないのでは、という気もしますけど……。ちなみに栞菓子店さんの紙袋に関しては、自由港書店さんの店主さんにも完璧に気づかれており(そもそも隠してはいないわけだが)「そこのお菓子は私もたまに買いに行くんです」みたいにおっしゃっていた。みんな知り合い……なのか……? たまたまか、それともこういう街の小さなお店はけっこうご近所付き合いも密なのかな。まあ個人商店ではなくショッピングモールとかでも隣接してる店舗の店員さんとはなんとなく顔見知りになったり仲良くなったりはするものな……。

動揺はしていましたが落ち着く空間ではあったし、コーヒーもケーキもおいしかった。天候にも恵まれ本当に楽しい一日だったなぁと思います。やっぱり神戸好きだなぁとも思ったので、なんか、もうちょっと気軽に足を運びたいものです。