つい先日、ひょんなことから近鉄の株主優待乗車券をいただきました。これは、近鉄の路線内なら全区間で自由に使える片道乗車券で、途中下車はできない代わりに利用区間の制限はたぶんない。特急に乗る場合は特急料金だけ別にかかってしまいますが、たとえば近鉄内ではおそらく最大料金になる大阪ー名古屋間であってもこれ1枚で乗れてしまうという魔法のチケットです。いただいた枚数は4枚で、期限は年内いっぱいでした。
もらったタイミングでしっかり酔っ払っていた私は、確かその場で名古屋に住んでいるともだちに「会えませんか!?」と打診して、そのままとりあえず名古屋行きを確定させた。あれはちょっと私とは思えない行動力でしたね。この文章から察せられると思いますがつまりは年内に名古屋への旅行記録もあがるのではないかと思います。こんなにあちこち出かける季節まじでそうそうない。この秋私は人生を楽しみすぎている。
さて、名古屋往復で2枚使うとして、乗車券はあと2枚あります。去年行った吉野とかも楽しかったし、秋の奈良もよいかなぁとは思ったのですが、せっかくならこんな機会でもなければなかなか行かなさそうなところに行きたい。大阪から見て名古屋の次に遠そうなのは三重の賢島ですが、賢島ってリゾート系というか、グランピングとかの印象が強くて、ひとりでふらっと遊びに行く感じではない気がします。ただ、三重ってたぶんそれこそ小学校の修学旅行ぐらいでしか訪れたことのない土地だし、今行ったほうが楽しいものがたくさんありそう。そうだ三重に行こう。
ということで、三重です。今回は鳥羽まで行って観光をしたうえで1泊、2日目は伊勢に移動し、伊勢神宮などを観光してから大阪に戻る、みたいなルートにすることにしました。宿泊に関しては正直かなり迷ったんだけどせっかくめちゃくちゃ安く三重まで行けるなら伊勢も鳥羽もちゃんと行きたかったし、その2カ所を1日で回るのはさすがにどう考えても難しいので、「宿代が正規の往復料金を越えない範囲までなら泊まったほうがお得!」と言い聞かせながら安いゲストハウスを取った。誰かに会いに行くわけでもない、ライブやイベント合わせでもない、完全な一人旅、かなり久々でわくわくします。
大阪から鳥羽までは特急で2時間5分。ちなみに有料特急を使わない場合は3時間ちょっとぐらいかな? 特急を使うかはぎりぎりまでけっこう迷っていたのですが、前日までの体調がそこまで万全でない感じがしたので普通の電車で座れなかった時に体調崩したらやだなぁというのと、あと当日の天気予報があんまり良くなくて、昼から雨っぽかったので午前中早めの時間に着きたいなぁという気持ちもあった。で、当日朝に特急の席をいちおう確認したらなんとビスタカー! 名前は席取るときにはじめて知ったのですがこちら、2階建の特急列車です。乗りたすぎる。悩んでいた事など忘れ即時指定席を取りました。当然2階席窓際です。わくわくする。
とはいえ前述の通りこの日天気はあまりよろしくなく、かつ大阪を出発するのは6時ぐらい。11月の朝6時、思った以上にぜんぜん暗い。なんにも見えない。まあ大阪市内は別にいいか、て最初はちょっと寝てたりもした。明るくなってきてからも基本的には車窓の風景はおおむね霧がかってはいたのですが、視界が高くなるとちょっと風景はひろびろと見える気がしたし、走っているときよりも駅に止まったときの視点の高さがすごく新鮮で、おもしろかったです。
始発で出たので8時過ぎには鳥羽にいました。あっという間。鳥羽の駅の近くには遊覧船と定期便のターミナルがあり、私は遊覧船で行ける「イルカ島」という観光島に行きたかったのですが、最初の船は9時過ぎです。さすがに早すぎる。あさごはん食べられるところもあんまりないかもしれないなぁと思っていたのですが、定期船のターミナルに喫茶店が併設されていてそこは7時開店だったので、まあせっかくだしモーニングをいただきます。
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これで500円。ここが名古屋かもしれません。(私は名古屋のすごいモーニングも別に食べたことはない)
バターたっぷりのトーストも塩胡椒しっかりの目玉焼きもおいしかった、 目玉焼きは半熟が好みではありますが、この目玉焼きの下には千切りきゃべつのサラダと柿とバナナが隠れているのでこのお皿においては半熟だといろいろ大変かと思います。ちなみにここ、客席から定期船の発着が見えてそれもすごく良かったのでした。幸いこの時点では雨も降っていませんでしたし、風はすこし強いかな、と思ったけれど遊覧船も平常運転とのこと、すこしゆっくりさせてもらったあとに遊覧船の乗り場に向かいます。
イルカ島に向かう遊覧船は、鳥羽水族館前のターミナルから出発し、この朝ごはんを食べたカフェのあるターミナルを経由して島に向かいます。料金はどちらから乗っても同じで、おそらくイルカ島への入園料を兼ねている。私は船が好きなので同じ代金払うなら長い間乗っていられる方がいいよね、という気持ちで鳥羽水族館前のターミナルまで徒歩で一度戻ってそちらから乗りました。海沿いの道が散歩コースとして整備されていてすごく気持ちよかった。
駅や駅周りの建物の外観は全体的にかなり年季が入っていて、どちらかというとひなびた印象が強く、朝イチということもあってか鳥羽水側のターミナルから乗り込む人もかなり少なかったです。イルカ島ではイルカに触れるアクティビティもあって、先着順で定員は決まっているのですが、この感じだと参加できるかもしれない、などと思っていたのも束の間の話、次のマリンターミナルでめちゃくちゃたくさん人が乗り込んできたので島に着く前にさすがにそれは諦めた。
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イルカを触ることはできませんでしたがカワウソに触ってもらうことはできた。おててぷにぷにでかわいかった……。なんかひとりでなんとか撮れないかとあたふたしてたら後ろで並んでた方が写真撮ります?て撮ってくれました、ありがとうございます、人の優しさに触れるひとり旅です(でもご迷惑おかけしました……やはり自撮りのプロにならねばならない)
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そもそもイルカ島とはなんなのかといえば、360°海に囲まれた海辺のレジャー施設(HPのり引用)です。鳥羽水族館、アシカのショーはあるけど実はイルカのショーがない。イルカ自体も、たしかイロワケイルカとかマナティーとかジュゴンとかは飼育されていたのですがショーの定番のバンドウイルカはいなかったと思います。水族館にいない代わりなのかは分からないですがこのイルカ島にはいて、イルカショーはこちらで見られる感じになっていました。他にもアシカのショーがあり、カワウソがいて、ケヅメリクガメも(時間によっては)歩いているそうです。
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私が行った時には水槽?ケージ?のなかにいた。お天気良さそうに見えますがこれは照明です。
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イルカショーもアシカショーも、雰囲気はゆるめ。そもそもショーではなくあそびの時間という名前で、あくまでイルカやアシカと一緒に遊んでいますよ、という雰囲気で、彼らのやる気に寄り添うように進行してる感じでした。やりたくない子はすぐ引っ込んじゃった。まあ生きてたらやる気ない日もあるよね。天気も良くなかったし。
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島自体はゆっくり散歩しても1時間もかからず回れるかな? 高低差がけっこうあって、展望台も併設されています。展望台のある広場までは階段で226段、海抜は60m。船着場と2分で往復可能な展望リフトも有料で設置されている……のですが……。
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絶対無理……。
ので、私は歩いてのぼりました。なんならスケジューリング失敗したから2回のぼった。結構な運動になります。イルカ島に行ってみたい人は足腰が健康なうちに行くことをおすすめします。このリフト、高齢者、妊婦さん、飲酒している人などは安全面の問題で利用不可みたいでした。やっぱり危険なんじゃん!(リフトの上で断とうとしたり暴れたり故意に落ちようとしない限り危険ではないとは思う、こわいだけで……) 私はスキーをしないのですがスキーリフトもこんな感じなのかな? たぶん一生できませんねスキー……。
ちなみにこの、イルカ島への往復の遊覧船、店内売店でカモメの餌が買えて、デッキでカモメの餌やりができます。そして、観光客が嬉々として餌をやりに来ることをおそらくこの近辺のカモメたちは学んでいます。
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デッキにいるとものすごく近くをとりがヒュンヒュン飛んでいくし、船の周囲にもものすごい量のカモメとトンビが舞い飛んでいる。もはやイルカ島よりこのデッキがたのしい。たのしすぎる。私は餌を買いに行こうとしたタイミングでなぜか売店に誰もおらず、まあいっかって諦めちゃったんですけど周りがほとんど全員買ってせっせと餌やりをしているのでなんか、ただ乗りみたいに群がるとりたちの恩恵に預かってしまった……すみません……でもめちゃくちゃ楽しかった! 遊覧船だからいちおう、景勝地とか、観光ガイド的な音声は流れていたはずなのですがもうぜんぜんそれどころではない。鳥羽湾の諸々を何も知らないまま往復してしまいました。
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マリンターミナルで整列して船の出港を待つカモメたち。ちなみにイルカ島近辺にはカモメが多いのですがマリンターミナルに近づくにつれてトンビが増えます。トンビは行きのお客さんのほうがテンション高く餌をくれることまで学んでいる可能性がある。間近に飛んでいくのを見れて本当に格好良かった。
遊覧船の発着は鳥羽水族館(と、ミキモト真珠館という真珠の養殖に関する資料館、今回は時間足りなくなると思ってパスしました)前なので、当然イルカ島のあとは鳥羽水族館にも寄ります……が、その前にちょっと行きたいところがあったので一旦水族館はスルーです。
ちなみに雨、イルカ島にいる間はぎりぎり持ったのですが、戻ってきてからはさすがにぽつりぽつりと降りはじめ、風も強くなってきました。晴れ女返上です。イルカ島午前ルートと午後ルート、どっちにするか悩んでたんですけど午前に行ってよかった。まあ雨の予報出てたから午前で確定させたんですけどね。
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ともかく降り出した雨の中をてくてく歩いて一旦お昼ごはんを食べに行きます。手ごね寿司と伊勢うどんという伊勢名物よくばりセット。人気店だったみたいですこし並んだのですが、店員さんがずっとお待たせしちゃってすみませんーておっしゃってくれててこちらが申し訳ないやらありがたいやらでした。料理はどちらもめちゃくちゃおいしかったです。というか伊勢うどんがね、はじめて食べたのですが本当においしかった……あつあつでふわふわで、タレも真っ黒なのにそこまで味が濃いわけでなく、ものすごくやわらかい印象の食べ物。私は讃岐に心を売ったのでうどんはコシと喉越しだろう!という気持ちでずっと生きてきたのですが、これは宗旨替えを迫られる可能性すらある。
津原泰水の小説に『歌うエスカルゴ』というのがあって、これは讃岐うどんの老舗の跡取りが伊勢うどんの老舗の看板娘と恋に落ちるもののその相容れないうどん観に懊悩するみたいな話(絶対それだけじゃなかったと思うけどほとんどそれしか覚えてない、そこがおもしろすぎて)なのですが、わかる……これは、悩ましい……みたいになっていました。いやーおいしかった……。
で、ご飯を食べてどこに行ったかというと、かどや、という薬屋跡の大邸宅です。
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江戸時代から続く鳥羽随一の資産家の邸宅跡、とのこと。古い建物大好きなので歩ける距離っぽいし行ってみるかーという気持ちで行ったのですが、ここ、かなりおもしろかったです。HPみたいなものは見つけられず、Googleマップにも見学できることは書かれているものの入館料とかの説明が全然なくて、それらしい建物を発見しておそるおそる扉を開けたら受付っぽい方に「どちらさま?」みたいな反応をされ、見学に来たことをお伝えしたらちょっとびっくりされた。入館料はいらなかったです。観光地として見学用に残している建物というよりは、カルチャーセンターみたいにいまでもふつうに使われている建物みたいで、私が行った日も手芸教室とかパソコン教室が開催されていて、その受付の人もばたばたといろいろ用事をしながら、でもすごく丁寧に建物のことをいろいろ解説しながら案内してくださった。
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昔の暮らしや薬屋で使われていた道具なんかの展示の中にしれっと紛れ込み異彩を放っていたたい焼き図鑑。誰の情熱の結晶なのかはわかりません。聞けばよかったかもしれない。
最寄り駅は鳥羽ではなく中之郷というところになると思います。鳥羽の駅からはさくさく歩いて20分か、もうすこしかかるかな、というぐらい。私は歩くのかなり速い方だと思うのですが、この日は雨も降ってましたし、町並みの雰囲気も楽しくかなりふらふらしながらのみちゆきだったので、まあまあ一般的な速度で歩いていたのではないかと思う。
そんなこんなで鳥羽水族館にたどり着いたのは14時過ぎでした。閉館は17時だしさすがに人も落ち着いてるだろう、とたかをくくっていたらぜんぜんそんなことはなく、なんならまだ入場ちょっと列があって普通にびっくりしてしまった。人気スポットだ……館内も賑わっていたし、今回タイムスケジュールの関係で最初から目的から外していたショー関連はおおむねはじまるけっこう前に満席の案内が出ていた。すごいなぁ。
鳥羽水族館、順路のない水族館、ということで、館内のあちこちに館内マップと案内表示があって、順路にこだわらず見たいところを見に行けるコンセプト自体はすごく素敵だと思うのですが、動線が定められていない分来館者が多ければ多いほど人の流れがごちゃつく面もあるかもしれないなぁと思いました。こういうのって難しいよな。あと単純に方向音痴はしょっちゅう道に迷って行き先を見失っていた。展示自体はかなり面白かったです。
水族館の花形展示って、魚ではなくイルカやカワウソ、ペンギンなどなどになることが多いと思うのですが、ここまで海獣類の展示が多い施設も珍しいのではないかと思いました。剥製や骨格標本まで展示していたからなおさらそう感じたのかもしれません。あとジュゴン。国内では鳥羽水族館でしか見られないというジュゴンは、私が行ったタイミングでは水槽の奥の方でじーっとしていて尻尾しか見えなかったのですが、そういう貴重な展示を成り立たせているのは当たり前だけど飼育の技術の高さゆえということなのだろうなぁ、みたいなことを考えていました。あとアルビノの個体がやたらといた気がする。けっこうあちこちの水槽に展示個体はアルビノとか、どこそこから寄贈みたいな説明があって、そういう珍しい個体が集まってくるのもここなら大丈夫みたいな信頼があるのかな、みたいな。
ラッコも国内ではもう2館しか飼育してなくて、そのうちのひとつが鳥羽水族館らしいです。ちなみにもう1箇所であるマリンワールドうみの中道には実は去年行っていて、私ははからずも国内で会えるラッコを3匹とも見たということになる。もう3匹しかいない、ということが改めて信じられない気持ち、昔はもっとどの水族館でも人気のいきものというイメージだったので。
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ちなみにラッコは見れはしたのですが猛スピードすぎてぜんぜん撮れなかった。去年の写真探してみたけどなかったので福岡でも撮れてないんだと思う。ラッコ、すごい速度で泳ぐ。
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もぐもぐタイムに合わせてタイムスケジュールを組むことはできなかったのですが結果的にもぐもぐタイムを眺めることができた子もいます。かわいい。
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館内の売店には伊勢名物に群がるかわいい子たちもいた。かわいい。
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これは私のもぐもぐタイム。二見にあるひみつビールいうブルワリーが作っている鳥羽水族館限定のビールです。二見は宿を取ったあたりで、だから晩ごはんを食べた居酒屋にもここのビールは置いていました。おそらく小ロットで限定ビールをたくさん作るタイプのブルワリーだと思うんですけど、だから全体的にけっこうお高めで個人的には普段だったらちょっと手を出さないラインのものではあるんですけど、ここでは旅だし!ここでしか飲めない限定ビールだし!ラベルもかわいいし!とえいやと買って飲んでしまった。ちゃんとしっかりおいしいビールでよかったです。
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伊勢海老VSうつぼ。戦ってるようにしか見えないんですけど仲良く共生する関係だそうです。うつぼはかなり最近食べたので「こんな顔しててもこいつ、おいしいんだよな……」という気持ちで眺めることを止められなかった。
入館が遅かったのもありほぼ閉館時間までゆっくり見てるうちに外はだいぶ荒れてきてまして、駅までの道のりなかなか大変でした。雨よりも風の強さが。これ午後船ちゃんと出せたのかなぁと思うぐらい波もざばざば言っていましたし。でもまあなんとか駅に戻って宿まで移動です。
翌日朝もだったんですけど、このあたりのJR、おおむね1時間に1本ぐらいしか電車が来なくて時間調整わりと大変でした。そもそも鳥羽がかなり大きい駅なのに無人駅だったんですよね。交通系ICも使えない。本当に意外だった。めちゃくちゃ観光地だと思っていたので……駐車場がどこも混雑してた印象あるので、車で来る人のほうが多いのかなぁとは思います。
ともかく移動して宿に荷物を置き、晩ごはんは宿の近くの居酒屋さんで食べました。普段は旅行者よりも地元の常連さんが多いお店のようで、なぜそれを知っているかといえばお隣に座っていたのがその地元の常連さんで、この日はたまたまカウンター席がこの常連さんを旅行者たちで囲むみたいな状況になっていたからです。いろいろ教えてもらったし、ひとり旅だったのにけっこうおしゃべりしながらごはん食べられたのが楽しくてなんかすごい、旅を感じたな。ごはんもすごくおいしくてよかったです。楽しい夜だった。
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メニューに、さめたれ、という聞いたことのないものがあったので、これなんですか?と聞いたら、サメの身を干物にしたものとのこと。気になったので注文したのですが、これ一皿で無限に酒が飲めそうでした。おいしかった。伊勢・志摩地方の郷土食みたいです。伊勢でサメを食べる文化があるのぜんぜん知らなかったな。
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お昼に食べた手ごね寿司でかつお、おいしい魚だ……と再認識してしまったので〆に頼んでしまったかつおのお茶漬け。これもすーごいおいしかったです。普段あんまり〆頼まないんだけどやはり米はよい。そしてこの秋私はかつおを食べ過ぎている。なんかもうおいしくて……つい……。
そんな感じで旅行1日目は幕を閉じます。私はこの時点で楽しく酔っ払っていたのでまだ気づいていなかったのですが、久々のひとり旅で浮かれてさすがに少々歩きすぎ……というかたぶんイルカ島の階段2往復がやばかったんだと思うんですけど、翌日は近年稀に見る足の痛みに悩まされることになりました。筋肉痛もだけど足裏がめっちゃ痛かったし、なんなら今も痛いぐらい。まあそれでも翌日もガンガン歩いてきましたけど!
ということで2日目は伊勢編でまた別記事を立てます。先に書いておくと2日目もめちゃくちゃ楽しかった!