11月6日

沢村
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公開:2025/11/6

 新宿は臭いし、出社は面倒だ。帰ったらドタバタ必至。こんな日に限って夫が食洗機を回すのを忘れていたため、タスク+1だ。あーもう! と思っていたのだが、伊坂幸太郎先生の『さよならジャバウォック』を行きの電車で読み終えて、とても爽やかな心持ちだ。面白い本って、最高!

 ネタバレになってしまうと嫌なので、内容に関わらない部分の感想を述べる。旧伊坂作品のハラハラドキドキ感に、最近の伊坂作品の思想がふんだんに盛り込まれていて、ページを捲る手は止まらないのに、たびたび考えに耽る時間が必要になるという、ページ数に比して読み応えのある一冊だった。はぁ、楽しかった! なぜか最近考えを巡らせていたことなんかも出てきて、ささやかに嬉しい。

 好きな作家の一人に、必ずあげる。私は伊坂先生のエンターテイメントが大好きだ。話の展開や構成、会話の妙やキャラクター造形はよく言われるところだと思う。勿論そこも大好きだ。でも私がとりわけ刺さるのは『恋』や『愛』の描き方と、登場人物がめちゃくちゃクヨクヨ考え事をしまくるのにその人自身の理性や論理を失わないことが多いところと、手に汗握る展開なのにどこか冷静な書きぶり、かもしれない。あと色々深いことを言っているし、テーマもど、が付くくらい重いのに、軽妙でエンターテイメントを徹底しているところ。この塩梅、最高です!

 私が伊坂作品に出会ったのは中学生の頃で、少し好意を持っていた男の子が薦めてくれたからだ。当時からフットワークが微妙に軽かったため、薦めてくれたその日に『オーデュポンの祈り』を読んだ。あまりに面白くて、すぐ読んだ。翌日が土曜日だったので、父親を連れてブックオフに行った。(父親は本ならなんでも買ってくれた)(ただし村上春樹と村上龍は高校生になるまで読んではいけなかった)(なぜ『新宿鮫』が許されたのかは不明だ)。

 ありったけの伊坂作品を買って、新しいのはなかったので、新刊書店に父親を引っ張り、全部手に入れた。土日で全て読み、好意を持っている男の子にぜひ語ろうと詰め寄ると、『ちょっと怖い』『俺全部は読んでない』と言われ、寂しい気持ちになった。なんでだよ。しょげる私に彼はBUMP OF CHICKENのアルバムを貸してくれて、やはり優しい男の子だったと思う。

 ちなみに私はこれ(一気購入一気読み)を、小学6年生の時に宮部みゆき先生でもやっている。恵まれた子供だとは思う。オタクになっちゃうけど。

 と、まぁ、その時に近しい気持ちになった。と同時に、私が書きたいのはこういう、複雑な気持ちを喚起させながらも、楽しく読めるエンターテイメントなのかもなぁなんて思う。あぁ、でも、面白い本を読むと楽しくて嬉しくて、落ち込む。

 うぅー。でもいつか私の小説で、誰かの憂鬱な1日の始まりをちょっといい気分にさせてみたい! と願うのだった。機嫌がいいので図々しく、言葉にしてみます。