10年遅く生まれたら

沢村
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公開:2026/6/22

 よかったのになぁ、と思わないでもない。平成初期の、『近未来に辿り着きましたよ』風を装った若干カオスでダーティな空気感が嫌いなわけではないが、嫌なことも多かった。

 一番羨ましいなぁと思うのは、価値観の変化である。私が子供の頃は、まだまだ同質化上等! の時代だった。多様性などというのは、高校生くらい以降に見知った概念な気がする。

 私は異常なる高身長であったため、『虐めてもいい』人間だったようだ。小学校1年生の時、学校案内を担当してくれる2年生に『こんなに大きい子は可愛くないからやだ!』と泣かれ、教師はなぜか『わかるけど我慢してね』と2年生をフォローしていた。逆上がりができないと『高身長のくせに』と馬鹿にされ、『巨人を討伐せよ』などと年上のガキどもに輪ゴム鉄砲で撃たれ、腹が立ったので鉄砲を破壊すると殴られた。兄くらいしか助けてくれなかった。(なおまだ進撃は連載開始していない、もちろん)

 女子は、小さくて可愛いが正義だった。ミニモニ。に身長要件で入れなくて泣いたし、高校生の頃は付き合っていた彼氏に『ヒールを履くな』と言われてイライラした。令和は、高身長は高身長でかっこいい! みたいな時代だが、私の青春では高身長は迫害の対象だったのだ。異端審問じゃねぇんだぞ。なんなら目が小さめなので、ブス扱いである。ルッキズムにルッキズムにで返すようで恐縮だが、自分より背が低く頭が悪い男が私(含め、大学のクラスの女子全員)の外見に点数をつけていると知った時は、普通に暴力を働いた。ブス扱いが嫌だったのも7割くらいあるが、『そうしてもいい』と思われていることに死ぬほど腹が立ったし、私は比較的沸点が低いので。高得点をつけられていた女子にも喜ばれ、『あぁ、やっぱりこれって間違ってるよなぁ』と思った。

 今でこそ信じられないと思うが、私が就活をしていた時は、誰でも名前を知っている大学を卒業していても、『文系女子は一般職で』と言われる雰囲気が全然あった。パンツスーツやショートカットは『イキってる』と思われるから不利だとかなんだとか、馬鹿みたいな話が蔓延していて、どうやら事実らしかった。私の怠慢で就活の成果がめぼしくなかったために、親は特注でスカートスーツを作ってくれた(既製品だと短すぎ、イメクラみたいになるため)。馬鹿らしいと思いつつ、ストッキングにイラつきながらそれを履いていた。パンツスーツを履いているから性格がきついと思われるなんて、おっさんに輪ゴム鉄砲で撃たれるのとなんら変わらない屈辱である。(しかし書いてみて思うが、実際性格はきつい)。 

 私自身が時代に追いつけているかどうか、他人の立場を慮れているかどうかは別として、そういう類の理不尽が、平成にはあった。人間としてどうこうではなく、女として、愛玩される側の性別として『不適』とジャッジされてきた記憶が、めちゃめちゃにこびりついている。クソ、クソ、クソ!!

 令和は、そういうあれそれがマイルドな気はする。マイルドながら残存はしているので完璧に生きやすいわけでもなかろうし、じゃあ完全に男女平等が良いのかというとそうでもないと思うが(生き物として違うのでね)、少なくとも小学1年生の私が『デカすぎてキモい』と言われたら、誰かが『そんなことない!』と叫んでくれる気がする時代だろう。パンツスーツで面接に行っても、許されるだろう。本音はともかく。

 この価値観の変化は、私が社会に出て10年くらいのうちに、どがーーーーっと生じた気がするんだなぁ。今の新入社員だったら、どんな感じなんだろうなぁ。もう少し、自分に自信を持っていたのかしらん。

 まぁ、今の新卒は新卒で、ジョブ型ーとか、AIーとか大変なんだろうし、完全に発言が『オレの若い頃はなぁ……』的老害になっていることを今自覚したので、皆さんはこれを思い出話として片付けてください。

 何卒よろしくお願いしたい。