からーん ころーん♪

せがわ
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今年はじめて劇場に足を運んで映画を観た!

「鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎」

【観に行くまで】水木先生生誕100周年記念作品のもう一作が水木先生好事家の方からの批判を集めているのを読んでこっちも微妙かな〜と思っていたのだが、蓋を開けてみたら爆当たり! Twitterのフォロワーさんもリアル友だちも別段水木作品読んでない人がメッチャ見に行ってよかったって言ってる! (読んでるフォロワーさんも言ってる!)そんなん……水木作品わしらもちょっとは見とるわ! となり、まず妹が見に行ってその感想を聞く限り自分も喜べそうだったのと、作中に登場するあるキャラクターが好きそうだという自分が立てた推測を妹に話したところ「きっとそうだろう」と後押ししてもらい、楽しめる自信がついたので観に行くことにした。

【全体の感想】これほど「音楽の仕事がすごい!!」と映画で思ったのは音楽映画以外では初めてかも……!

もともと親が映画好きで、かつ妹が横溝作品の映画版を見まくっていた時期があるので、私もその受動喫煙というか一緒に見ていたためその手の実写邦画は同年代の中では比較的よく見ている方だと思う。自分としては、この作品において「昭和の横溝作品の映画みたいな雰囲気」を出しているのは、絵よりむしろ音楽だと感じる場面が多かった。今までもよく川井憲次さんの作ったBGMの流れる映像作品を見てきたが、これほどすごいものが作れる方だとは。

本作はエンドロールが一番素晴らしいのだが、エンドロールもBGMが最高の仕事をしている。絵も展開も良いのだが、「カランコロンの歌」のアレンジBGMが最高の味付けをしてくれているのだ。一番感情が盛り上がる場面で一番音楽を盛り上げてくれるし。号泣してしまい、しばらく立ち上がれなかった。

【キャラクター映画としての感想】主役といえる水木・ゲゲ郎共に個人的なオタク性癖に刺さるタイプのキャラクターではない。そのため当初は観る気がなかったのだが、ネタバレ感想をいくつか読んでいるうちに沙代さんが私の好きそうなキャラクターだと気付いた。

実際観てみても非常に好きなタイプのキャラクターだった。怒りと憎しみと力、そして悲しみとすこしの恋。彼女が暴れた場面には涙を誘われた。水木との関係も好きだ。私は「現状に閉塞感を覚える少女が他の世界から来た男を慕う」「男は少女を利用するがだんだん同情していく」がめちゃくちゃ好きなので……。水木が最後泣くのもパッと切り替えるのも良かったな……。

長田と乙米さま、ゲゲ夫妻の関係も良かった。尺を割かずに愛情やそれまで過ごした歳月が感じられた。あとバトルシーンにやたら力が入っていてかっこよかった。

【エンドロール】なによりもエンドロールが素晴らしかった。私はゲゲゲの鬼太郎は多少読んだことがある程度でアニメシリーズも通しで見たことはないのだが、墓場鬼太郎はアニメ版を通しで見、漫画も読んだ。本作はゲゲゲの鬼太郎アニメ版6期の前日譚として作られており、内容からも本作の「水木」は私が読んだ漫画や見たアニメの墓場鬼太郎に登場する水木とは少し違う人物として描写されていることがわかる。その水木が相棒の愛する妻を必死で助けようとした記憶を失っていたところで本編は終わり、その後がエンドロールだ。隣の寺に越してきた人を見に行く水木……。水木しげる先生風の絵柄で、墓場鬼太郎で読んだ鬼太郎誕生の流れとは少し異なる物語の続きが展開される。カランコロンの歌のアレンジが流れる中でその絵柄で話が展開されるだけでもう泣けるのだが、更に内容が泣ける。水木が記憶を失くしている悲しさ、けれどふたりを埋葬する優しさ。そして、再びアニメの絵に戻り、セリフが入る。墓の中から生まれた鬼太郎を一瞬殺そうと思った水木だったが、失った記憶の中の相棒の姿が一瞬よぎり、手の中のちいさな命を抱きしめる。音楽もここで盛り上がり、ボロボロに泣いてしまった。タイトルどおりのラストであるし、とても好きだ。思い出すだけで泣けてくる。

【微妙だったところ】セリフ回しが微妙だと感じる場面が時々あった。「これ木内の声じゃなかったら微妙だったけど木内の声だから良く聞こえるな……」みたいな……。キャストがイマイチだったら中盤まで全く集中できなかったと思う。全員しっかりキャラに合っている本職の声優さんで固めているからこそ気持ちよく見られる作品だと思った。

あと、ねずみ男があまり活躍しなかったのは勿体なかった。うまく使えば本筋の展開に活かせるポテンシャルがあるキャラクターだと思うのだが……。

【総評】特に音楽や声などの音の凄さを感じる作品だった。正直なところ脚本に粗はあると感じているのだが(だからこそオタクにウケているように思う)、水木しげる先生の人生や鬼太郎にしっかり向き合っていてよかったと思う。個人的に一番良かったなぁと思うのは、水木先生のご息女がこの映画のヒットをとても喜んでいらっしゃることだ。うれしそうなツイート(ポスト)を見られることがとてもうれしい。水木先生もきっと喜んでいらっしゃることだろう。本作は児童向けではないのできっかけにはならないと思うが、またでっかい妖怪ブームがきてほしいところだ。