「一度あったことは忘れないものさ。思い出せないだけで。」
千と千尋の神隠しに出てくる台詞。忘れてしまったと思っても、心のどこかでは覚えているから、思い出は無くならないし、頑張れば思い出せるかもしれない。そんな、忘れたくなかった何かを前提としたエピソード。
一方で、忘れてしまいたい何かというのも確実にあって。そういうものも記憶としては同じ扱いとなると、「一度あったことは忘れない」は途端にニュアンスが変わってきてしまう。
人間の脳の最も厄介な仕様が、意図的に忘れることができないことだと思う。
忘れないためには外部記録などで多少の対策は取れるけど、忘れるためにできることは基本的に何も無い。
かろうじてハックできそうな仕様として、記憶の扱い方がLIFO的なので、他に大量の覚えるべきことが繰り返しインプットされると、過去の出来事は段々と奥底に押し潰されていく。
忘れるために必要なことは、他のことをたくさん覚えることなのかもしれない。それでも何を忘れるか選ぶことはできないけれど。