この瞬間あるものにフォーカスして、ひとつに集中して、おかげで得られるものがあって、同時にその瞬間、隣にある欠片を見逃して、後回しにして、それが失われていることに気付いていない。できることなら注意深く、何も腕からこぼさずに歩きたいけれど、抱えるにはあまり大きくないこのからだで、地面に落として転がったものを拾うこともできず、目を背けることしかできない。そのうち忘れる、その程度のこと。そのまま忘れて、あるとき肩を叩く。sei