泣かなくなったひと

静謐
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泣かない人は、愛されることを諦めた人だ。という言葉を、どこかで読んだ。

初めて読んだ時、なんとなく、分かるような気がした。

「じゃあ、素直に泣く人は、諦めていない人なの?」

そうかもしれない。

私には分からない。

諦める気持ちを知りながら、自然に涙が出てくる人もいるかもしれない。

いつだか、会話をしていて

「お母さんに嫌われないように……」

と呟いた時

お母さんが、「親が子どもを嫌うわけないでしょう」と怒ったことがあった。

私は「どうして怒るの?」と思った。

あるいは、こう言って欲しかったのかもしれない。

「嫌ったりなんかしないわよ」とか。

「どうしたの、そんなこと心配しなくても大丈夫よ」とか。

昔は、お母さんがそういう時に怒るのは、真剣な気持ちだからなんだろうと思って、深く考えなかったけど

今は……よく分からない。

私が考えすぎなのかもしれない。

だけど、あの時、怒るお母さんを見て

「図星をつかれた時と同じように、嫌いだという気持ちが少なからずあるから怒ったんじゃないの?」

「自分の子どもを嫌う自分を認められないから、怒るんじゃないか」

とも、思ってしまった。

本当のことは、彼女にしか分からない。

たとえ、お母さん自身にも分からなかったとしても、それは仕方のないことなのかもしれない。

@seihitu
𝓓𝓲𝓪𝓻𝔂