ひなまつりについてーーいただいたお題についてのお答え

眞鍋せいら
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先日Waveboxでお題を募集したところ、次のようなご質問をいただきました。ありがとうございます!(ご質問者さまへ。とりあえず全文コピペさせていただきますが、問題があればご一報ください。記事自体削除や一部添削をいたします。)

眞鍋さんこんばんわ。去年ヒプマイのことについて書かれた文章をお見かけして、そこからフォローさせていただいています。いつも眞鍋さんの穏やかなツイートに癒されたり、RTされていることから社会の様々な問題を知って関心が持てるようになったり…と、日々とてもありがたくツイートを拝見させていただいています。最近ちょうど眞鍋さんにお話してみたいと思った事柄があり、そんな時に見た質問募集だったので、つい飛び付いてしまいました…。もし、このことについては今関心が持てないな…と思われたり、考えることがしんどい質問だと思われた時は最後まで読んだり、お返事いただけなくても構いませんので、もし気が向くことがあれば、ふわっと読んでいただけると嬉しいです。私は保育士をしています。この時期になると、子ども達とひな祭りのためのひな飾りを作るのですが、いつもは「好きな色」を選ばせてくれる先生達も、この時だけは「お雛様は女の子の色」「お内裏様は男の子の色」の紙を選んで作るように子どもに話すことがほとんどて、何だかモヤっとしています。男女のペアであることがはっきり分かるように作らないと、それがひな飾りだと周りが認識できない…ということだと思うのですが…。一つ引っ掛かると、他にも「これを子どもにどう伝えたらいいの?」と思うことがポンポン出てきて、そもそも「結婚式」を表しているこの場面で「男女ペア」で作ることしか許されていなかったり、もっとそもそも、「女の子が健やかに大きくなりますように」と願った先にあるのが「結婚」であるというこの行事自体、どう受け止めたらいいのか…とグルグルしています。「そういう行事だから」「この行事だけのことだから」と割り切ってしまえばいいのでしょうか?でも、ここで引っ掛かったことを流してしまうことで、寂しさを感じる人がいるのを知っていて「そういうもの」と飲み込んでしまうのは悲しい気もしています。今年は自分の中で何も納得できないまま「子どもの健やかな成長を願う」意味があるという根っこの由来だけしっかり子どもに伝え、製作をしました。ひな祭りの行事を今後スルーすることはできないので毎年考え続けたいとは思っていますが、周りにこの話をしてもキョトンとされるばかりで…一人で煮詰めていてもあまりいい結論(子ども達にこの行事をどう話すか)に至らないと思い、眞鍋さんならひな祭りをどのように解釈されるか(もし批判があればどう思われているか)うかがってみたく、質問させていただきました。長くなってしまい申し訳ありません…。保育業界の雰囲気など十分お伝えできていない部分もあり、読んでいて分かりづらい箇所もあるかと思います。ここまで読んでいただきありがとうございます!はじめにも書かせていただきましたが、無理にお返事いただきたいものではありませんので、もし眞鍋さんがお話したいと思われる話題でしたら、ぽつぽつと呟いていただけると嬉しいです。春は心身共に調子を崩しやすい季節ですので、眞鍋さんもゆっくりお休みできますように…。また眞鍋さんの短歌や批評が読めるのをたのしみにしています。

以下、お答えになるかわかりませんが、返信とさせていただきます。

まずは、お題をくださり、本当にありがとうございます!ヒプマイの記事を読んでくださったことも嬉しいですし、日々のツイートを楽しんでくださっていることも光栄です。なにより、ひなまつりとそれをどう子供たちに伝えていくかについて、ご自分のご経験や考えをシェアしてくださって、ありがとうございます。

ひなまつり、ほんとに難しいですよね……。わたしもいま、諸事情があり一歳下のいとこの部屋に寝ているのですが、隣には彼女のおひなさまがどんと座っています。正直、それを見た時は「まだおひなさま出してるんだ」と少しびっくりしました。わたし自身のおひなさまは、物置の奥にしまわれていて、少なくとも三年は出していないと思います。「いちいち出すのがめんどう」「場所をとる」などの理由でわたしが出し渋り続けたからなのですが、本当はやはり理由は別のところにあって、家族にはあまり通じそうもないので、めんどうだからということにしています。

そして本当の理由というのは、まさにあなたがおっしゃるように、ひなまつりの発する「結婚は男女ペアで行うもの」「女の子の人生のゴールは結婚」というようなメッセージに疑問を持つようになったことです。

わたしはわりと、異性愛シスジェンダーよりというか、シス女性としてこの先男性と結婚する、ということもこの先ないではないかも……と思っている人間です。ですが、ひなまつりの風潮にはどうしても「乗れない」という感覚があります。自分は異性婚するかもしれないけれど、それを「うんうん、女性にとってはそれが幸せだよね、正解!」と他者から(または、社会から)言われることに対しては、「うるさいなあ」と思います。もちろん、カップルやパートナーは異性のふたりだけで構成されるものでもないですし、その「異性」のふたりは、男性=青系、女性=赤系の色で表されるものでもありません。そもそも「二人」というくくりにならなければ幸せになれないということもないので、ひなまつりのコンセプトは何重にも的外れであると思います。しかし、ひなまつりに関してもっとももやもやするのは、あなたが感じていらっしゃるように、「他人の幸せを社会が勝手に決めてくる」ことだと思います。

話がそれるようですが、少し自分の話をします。わたしは親戚の中でいわゆる初孫でして、つまりかなり甘やかされて育ったのですが、おひなさまも(わたしには今だに価値が分かりませんが)曾祖母に立派なのを買ってもらいました。アルバムをめくると、「せいらの初めてのひなまつり」という説明書きとともに、おひなさまの前でケーキを食べている(ないし、破壊している)0歳児の写真があります。

でも、家族には悪いのですが、おひなさまに憧れたことはほとんどありません。どちらかというと三人官女のひとりにシンパシーを感じて、紫式部や清少納言よろしく「わたしも大きくなったらあんなふうに仕事をするんだ」と思っていました(結局仕事自体もあまりしたくない人間になってしまいましたが……)。

何が言いたいかというと、あなたがもやもやと感じていらっしゃることに、今のわたしも同意しますし、幼い頃のわたしも、今ほどではないかもしれないにしろ、同意したのではないかなということです。

わたしがもしあなたのお立場だったら、きっと同じことを考えたと思います。ただ、「今年はおひなさまめんどうだから出さないね」と家族に言えばよいわたしと、行事として、またお仕事として、子どもたちにどう伝えたらいいのかと考えてらっしゃるあなたとでは、あなたの方がより難しいお立場だとも思います。上から目線になってしまうかもしれませんが、そんな中で、「子供の成長を願う」というひなまつりの根っこの部分を考えて伝えようとしたあなたに、敬意を表させていただきたいです。

ほんとうに、根っこの部分はきっとそれなんですよね。ひなまつりや「こどもの日」のメッセージは、子どもたちに健康に、もしかしたら健康じゃなくても、幸せに育って長生きしてほしい、食べるものや着るものに困らないでいてほしい、ということなのだとわたしも思います。その部分が子どもたちに伝わっていることが一番大事なのですから、わたしもあなたと同じようにしようとしたと思います。

そしてそのメッセージは、きっとあなたの教えてらっしゃる子どもたちにもすでに伝わっていると思います。幼い頃のわたしがそうだったように、ぼんやりとおひなさまより別のキャラクターに感情移入したり、ピンクや赤以外でおひなさまを作りたかったり、おだいりさまとペアになりたくない子だっているでしょう。ですから、あなたの行動は、そのような子たちにとって、今すぐではなくて後からでも、「ああ、あのとき先生は好きにひなまつりを祝わせてくれたな」「何が幸せか教えるのではなく、ただ自分たちの幸せを願ってくれたんだな」と気づくきっかけになっているのではないでしょうか。

ですから、まとめると、わたしはあなたに「すごい!尊敬しています!」のエールを送らせていただきたいです。もちろん、職場や周囲にどう伝えていくべきなのかという難問は残るかと思いますが、でも、いま考えてらっしゃることや行動されていることは、ぜーんぜん間違っていないし、ベストな答えだとわたしは思っています。

ご満足いただけるお答えになっているかわからないのですが……。勝手になんどもなんども、「間違ってないと思いますよ!」の応援をさせてください。

お題をいただき、ありがとうございました。

@seira
詩のような、日記のような