正朔の考える「丹恒こんな人」

井筒正朔
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※ ver2.4の開拓クエストの内容を含みます。

端的に解釈すると

記録と記憶をよすがにする開拓者

以下詳細です。

記録と記憶に貪欲な青年

丹恒が星穹列車で果たす役目のひとつが、アーカイブの管理(姫子曰く「記録員」)です。時折発するボイスや開拓者に送るメッセージからして、彼が「得た情報を文字で記録すること」に意欲的であることは、否むべからざる事実でしょう。

加えて丹恒は、非常に研ぎ澄まされた五感を持っていて、それによって感じ取った情報をよく覚えています。キャラクターストーリーを読んでいると、他者の感情にもひときわ敏感なようです(反対に、昼夜の感覚については資料室にいると鈍ることがあるようですが……)。

新しい一日が始まった。

この巨大な船のごく平凡な1日。市場の屋台は出たばかりで、葉尖には露がぶら下がったままだ。しかし通りを横切る少年は、このような景色を見たことがなかった。この都市の至る所が本の記述と違うことに気付くまで、彼は首に当たる陽光の暖かさを享受していた。

彼は初めて自分の体の全貌を見た。この体は自分のものであり、今の名前に属するものである。

埠頭に着くと、少年を押送する兵士が最後の枷を外した。彼は振り返らずに前へ進む。その間、少年は漠然と感じ取っていた。都市の中から自分を睨みつける、憎悪に満ちた数々の視線を。

(出典:丹恒/ストーリー・1)

故郷の人々が彼に「憎しみ」を抱いているとすれば、あの男が抱いているのは「殺意」だった。

(出典:丹恒/ストーリー・2)

また、「この都市の至る所が本の記述と違うことに気付く」「故郷の人々が彼に『憎しみ』を抱いているとすれば、あの男が抱いているのは『殺意』」といった記述が見受けられます。

このことから、彼は現状を分析するための検討材料として、自身の「記録・記憶」を引っ張り出していることが分かります。この能力ですが、ひとまずここでは「想起・連想の力」と呼称します。

(完全な余談ですが「殺意」を認知するために比較対象として想起したのが「憎しみ」って、なんかめちゃくちゃ不憫じゃないですか?)

ちなみに、下記の発言から、記憶力自体も結構良さそうです。

アーカイブに、関連する記述があったな…

(出典:丹恒/戦利品を開ける・2)

屋台の店主がくれた灯篭、見覚えのある形をしているな……

(出典:Twitter「スターレイル迎新春–笑顔」)

【丹恒】ここは…相変わらず寒いな。

【開拓者】丹恒、大丈夫か?

【丹恒】すまない、少し嫌なことを思い出してしまって……

(出典:開拓クエスト/風起雲湧、相見える鋒鋩・前編 - 折獄を論じる是非)

このコンテナ…見覚えがあるな。

(出典:開拓クエスト/風起雲湧、相見える鋒鋩・前編 - 折獄を論じる是非)

いたるところで「想起・連想の力」を働かせていますかね。

一方でブラックスワンから以下のような指摘も受けており、これについては追って解釈していきます。

「不朽」の後裔…本当に魅力的な龍ね。特に、その曖昧ではっきりとしない記憶が。

(出典:開拓クエスト)

よりよい未来の選択に求められるもの

さて、この「想起・連想の力」ですが、もう少し噛み砕くと「(外から受けた刺激に対し、)蓄積した学習データから適切な反応を検索して引き出そうとする力」となります。そしてこの能力は、丹恒の中で「記録・記憶」した情報が充実している状況下で自然と働くようです。

アーカイブの記録が充実している時、独立しているように見える「事柄」が、「人」の流れによって繋がることがある。

(出典:丹恒/見聞)

そうなると、この生来の「想起・連想の力」を有効に働かせるために「記録・記憶」を充実させよう、という思想が形成されるはずです。それはナナシビトとして最善の未来を選択するために必要なことでもあるでしょう。

アーカイブは常に更新が必要だ。俺と同じだな。

(出典:丹恒/キャラクター昇格)

未来を知ることはできないが…「選択」はできる。

(出典:丹恒・飲月/レベルMax)

数え切れないほどの道の中から、自分の限られた知識と判断で、できるだけ「自分に合った道」を選ぶことだと思うんだ。

(出典:開拓クエスト/ブートヒル:折れた矢)

さて、ここからが難儀な話です。

この能力は、おそらく丹恒が生きていく上で主軸に据えているものであると推測しているのですが、これは性格的なものなので、その働きを制御することができません。「やろう」と思ってできることではないのです。

これはなかなか辛い話です。まず、トラウマが頻繁にフラッシュバックします。とっても分かりやすく、悪夢とズッ友です。加えて、過剰な危機察知能力により、嫌な予感に支配されやすくなります。まあこちらに関してはうまいこと逆手にとって用心棒の役目を果たしているようですが……。

さらにこの能力は、その働きを一人で完結させることができてしまうものです。換言すると、プロセスを誰かと共有するのが難しく、有り体に言えば、彼はおそらく「感じていること・考えていることを人に伝えることが苦手」です。他者にはとっつきにくい印象を与えることになります(「無口くん」とかその代表例ですよね)。

前世のことは見知らぬ影のようで、はっきりとは見えないが、ずっと俺について回っていた。この感覚は上手く言葉にできない。

(出典:丹恒・飲月/自分について・前世)

ブラックスワンの「曖昧ではっきりとしない記憶」というのはもちろん丹楓としての記憶が混濁している状況を指すのが第一かとは思いますが、それに加えて自分の記憶・記録に対する意識の働かせ方をコントロールできない様子も形容した表現なのかな、と考えました。

孤独な龍の幸せはどこにあるのか

丹恒にどこか感じられる脆さの根源は「最善の未来を選択したいと願えば願うほど、独りで、膨大な量の情報を受容し続けなければならない」というところにあるのかなというのが個人的な考えです。

2.0の序盤で丹恒と会話する際、選択肢に「丹恒の意思を尊重する」というものがありましたが、これに対する返答が「お前にわかってもらえて、俺も少し気が楽になった」という発言でした。

まず、周囲から一方的に負の感情を押し付けられた過去や、自分の感覚を言葉にすることがおそらく苦手な気質から、きっと丹恒は「他者の理解を得られないことに対する不安」みたいなものを漠然と抱えているのだと思います。

そして、「記録・記憶」を蓄積し「想起・連想の力」を働かせて最善の未来を選択していく、という一連の姿勢は、どちらかというと堅実な生き方なので、おそらく不安定な状態に置かれると、強いストレスがかかるはずです(それでも一般人よりはよほど耐性があるでしょうが)。

したがって、自分の選択を尊重してくれるとか、より万全なものにしてくれるとか、そういった安心をもたらしてくれるような人物との関わりは、丹恒にとってものすごく救いになるのではないでしょうか。そして丹恒自身も、彼らに対して安心を与えようとする面がみられます。

動くときは気をつけるんだ。俺がいるから安心しろ。

(出典:丹恒・飲月/パーティー編成・開拓者)

面と向かってそうだと言うことは無いでしょうが、何十年何百年と孤独に生きることを強いられてきた丹恒の前に現れた理解者たちは、彼にとってまさに光のような存在なのではないかと思います。

列車組の旅路が幸いなものでありますように。