ミキサー車からの眺めは

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甲州街道の幡ヶ谷駅付近で信号待ちをしている間、路肩に止まっている1台のミキサー車をなんとなく眺めていた。50代くらいの女性が、車両後部上にあるホッパに、袋から砂のようなものを入れようとしていた。女性が着ている作業服は、少し叩くと白い砂煙がボワッと舞いそうなくらい、上から下まで灰色に染まっていて、その姿は、山田太一脚本ドラマ「ありふれた奇跡」で、主人公の左官職人である田崎翔太が、清潔感のある綺麗な喫茶店内で、自分の作業服の砂埃を手で払うシーンと重なった。

女性は、ホッパの投入口へと上る梯子に、慎重に手をかけながら上り、砂(?)を入れながら、時々不安そうな表情で遠くに目をやっていた。その表情と視線の先がとても気になった。ミキサー車のあのくらいの高さ、あの位置から眺める甲州街道は普段見慣れぬ視点で、おそらくちょっとしたものだろうと想像した。ぼくも女性と同じ方に目をやりたいが、その方向はぼくの後ろになる。信号も青になり、後ろを振り向くわけにもいかず、そのまま車を走らせた。その女性は、妻の母に少し顔が似ている気がした。

ちなみに、働く車が好きな3歳の息子にとってのミキサー車は、「ミックスジュースが作れる車」という一面を持っている。お気に入りのトミカのミキサー車で遊ぶとき、ホッパの中へ思い浮かんだ好きなフルーツを沢山放り込み、ドラム部分を小さな指でぐるぐる回しミックスする。そうしてできあがったミックスジュースを、他の車や電車のおもちゃに飲ませてあげる、ということをよくやっている。

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