ホワイトアウト

selvatica
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最近、私が住む地域では雪がよく降る。

カーテン越しの空は光を失い、車は水っぽい走行音を鳴らす。靴を履いて外を見れば、まばゆい粉雪が視界を埋める。

車窓から見える街並みは、霧に包まれている。普段のような光る景色は、その奥に埋もれ、やがて藍色に染まってゆく。

普段よりも、はるかに心細い帰り道。少し前に潰れた店は、看板も黙りこくっている。この悪天候の中、今までみたいに道路を照らしてくれていれば、まだ安心できるのに。

そんなことを思いつつ、雪降る帰路を安全運転で辿る日々。

白く霞み、先行きが見えないのは、帰り道だけではない。

私は今、道を見失っている。

自分がしたかったことは、なんだっけ。自分が愛していたものは、なんだっけ。

言葉ではわかってる。自分の過去からも、わかってる。だけど心が、随分と冷えてしまっている。

その切っ掛けはわかるんだ。大切だった世界のひとつと、決別をしたから。

かつての私を満たしてくれた世界。けれど、この半年で唐突に変容してしまったその世界。心に受けるストレスは、もう誤魔化せなくなっていた。

白く凍りついた、言葉足らずの世界。ほんの少しの冷静さで、ほんの少しの理性で、解り合うことができていたら、新緑は絶えなかったのだろうか。それとも私が今以上に心無き者となってしまうだけで、結末は変わらなかったのだろうか。

びちゃり。ネオンブルーの薬液が、ショッキングピンクの劇毒が、真っ白の中に酷く酷く焼き付いて、この心は限界を迎えた。

自分がやりたかったことは、既に叶えてしまった。出来映えは半々といったところだった。まだ3年の猶予こそあれど、世界との決別は、その猶予に対する意欲を削がせていた。

自分がこれから成したかったことは、山のようにあった。けれど、頭の中にあるそれらを形にすることが、どうしても苦しく思えてしまうようになってしまった。

「私は、何を、愛していけば。」

たった一つだけ解る、精神の底を挿して蝕む碧い花。けれどそれは、その「成したい」とは別種の愛だ。

……答えは、わかっているのにな。心のリハビリ。

瞼がゆらゆら、眠気を訴える。今日はのんびり動画を見ていたから、予定より遅くなってしまった。

私は一度夜更かしを始めると、気が済むまで眠れなくなる。そして次の朝になって後悔するのが決まったオチ。だから、夜更かしの時間へ入る前に、布団へ潜ろう。

週は既に、折り返しを迎えている。あと2日を健康に過ごし、12時間程度は捻出できるであろう自由時間を手にしよう。

そしてそれらを、新たな世界へ触れる足掛かりにしよう。愛を取り戻す鍵の材料としよう。

……この目標が、白まないよう。

私はこのしずかな世界に、残してゆく。

死ねない呪いの悔と涙、そして苦痛の中に芽生える、今の私にしか紡げない言葉を。

@selvatica
日記とか、思ったこととか。詩的な文章の練習。 感じたこと、考えたこと、喜びも悲しみも、残して置けるように。 (明るく暮らしたいけど、時々ネガティブなおはなしもあります。表紙の色がその文の雰囲気です)