ゲ謎感想文

せな
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公開:2023/12/3

ついにゲ謎を見てきたので感想を書きなぐります。ネタバレには一切配慮していません。

まず前提として、わたしは4期5期の鬼太郎を視聴済で、妖怪・因習村・時代物が大大大好きな人間です。映画の中で個人的に1番好きだったキャラは沙代ちゃん。元々黒髪パッツンお嬢様が癖なのもあるんだけど、生い立ち含めたくさん好き要素が詰まってる女の子だった。

事前に仕入れていた本映画の話の大筋は、権力を手に入れたい水木と、奥さんを探したいゲゲ郎(父)が利害一致により二人でおかしな村の謎を解き明かすというもの。

しかし、正直ツイッターの情報を鵜呑みにしすぎていたのか、謎解き自体は物足りないというか、お話のメインではないな~と感じたかも。よく近しい作品としてTRICKが挙げられているけれど、TRICKのように村を探索したり住人と会話したりすることはほとんどなく、色々見えているゲゲ郎がどんぴしゃで核心に迫ったせいで敵が勝手に本性を表し、そこから話が進んでいったという感じ。

序盤から一族の人間が次々と死んでいくけれど、その理由はなんというか叙述トリック的なものだし。沙代ちゃんが狂骨を使役して殺していたわけだけど、水木がゲゲ郎と長く時間を過ごし、目に見えないはずのものが見えるようになるまで気がつくことができない……当然我々観客には見えないから。

一方、ゲゲ郎はずっと見えていたんだろうなと思った。見えていたから、水木が沙代の好意を良いように使おうとした時に諌めるようなことを言ったんじゃないのかな。まぁ、普通に随分年下の女の子の好意を弄ぶのはどうかと思うし。ゲゲ郎は超愛妻家だし、思うところがあったのかもしれない。

話は変わるのだけれど、わたしは田舎生まれ田舎育ちなので、どうしても沙代ちゃんに感情移入してしまうことが多く、終盤はとても悲しかった。前当主との関係を水木に知られていたと告げられた時の彼女の顔が忘れられない。酷かもだけど、水木もそうであって欲しいなぁ。

だって、キッショい爺さんと力ばかり見ている大人達に囲まれて育った中、はるか遠い東京からやってきたという見目の良い男の人に鼻緒を直してもらったり、優しくされて、「私を東京へ連れて行って」と無理難題を押し付けても最後には折れてくれたらそりゃ好きにもなるでしょ……水木、罪深い男すぎない?

「水木さんが知りたがってるから」って、自分に関係を迫ろうとした男の日記を読んで届けたり、気を狂わせた男と会えるよう計らったり……健気すぎてわたしが泣いちゃうよ……こんな良い子の純情を弄ぶな水木!!の気持ちになったりもした。

捕らえられたゲゲ郎を助けに行く時だって、自分だけ逃げちゃえばいいのに「私も行く」と付いてきて狂言まで……最高の女だろ……水木も水木で銃は簡単にぶっぱなすくせに、沙代ちゃんの首に当てたナイフを持つ手は震えてて、ね……何?もう……

ここまで読んでくれた方には分かると思うんだけど、わたしは水木と沙代の危うい関係性が大好きでした。こういうのに超弱い。

もちろんゲゲ郎と水木の関係も超良かった。出会ったばかりの頃、煙草を1本くれと言ったゲゲ郎に水木が「いやだね」と言うシーンがあるんだけど、終盤でゲゲ郎が同じように「いやだね」って普段使わないような言葉遣いをしていて……うわ~!?ってなった。移ったの?それとも狙って?どちらでも良いな。

あと、地下(?)に捕らえられたゲゲ郎を水木が助けに来た時、ゲゲ郎は意外そうというか驚いているように見えたのに、穴蔵の最下部では前当主に斧を向ける水木を”相棒”と称して信頼しているのも感慨深いものがありましたね。

ゲゲ郎、長身痩躯白髪目隠れで幽霊族の生き残りなのさすがに属性盛りすぎやろ!と思っていたけど本当にかっこよかった……裏気道(?)の人達とバルコニー(?)で戦うシーン、本当に本当に最高だった。特に刀を噛み砕くところと、屋内に飛び込むところ。かっこいい。ここの戦闘描写が一番好みだったかも。

関係ないけれど、このシーンで気が狂ってる人(耕作だか耕三だかそんな名前の人)が水木の肩にすがりついてたの、なんかちょっと悔しい気持ちになりました。

水木メインで好きなシーンは、やっぱり禁域とされた島に入ったゲゲ郎を追いかけた後、ゲゲ郎が幽霊族であることを聞かされたところでしょうか。黄昏時、沈みゆく夕日をバックにゲゲ郎が水木を見つめるシーン。ゲゲ郎が人外であるということが強調されていて、とっても良かった。その後気絶しちゃう水木もとっても良いんだよね。気絶したり吐いたり首締められたり悪夢見たり……大変だね水木。頑張れ。

あとは、終盤の終盤、奥さんを任された水木が霊毛ちゃんちゃんこを自分ではなく奥さんに着せているところもかなりグッときた。自分は死にかけてるし、ゲゲ郎は妖怪大戦争真っ只中だし、奥さんとは面識すらないのに、それでもゲゲ郎の大切な人だから守ろうとして、救急隊が駆けつけた時にも自分ではなく奥さんのことを気にかけている水木。本当に素敵な人だ。

命からがら村を出たものの、何故か何も思い出せない。けれど、頭の中のどこかに桜の下でこちらを見る着流しの男がいる。大切な人などいない、そんな人が現れるだろうかと言った男が、奇妙な隣人の残した忘れ形見を育てて生きていく。最高の終わりだね。

ここからは妖怪物のお話が大好き故にここ良~!となったシーンについて書き残しておこうと思います。思い出したら随時追記する。

まずは最初の記者がトンネルの前で鬼太郎達に忠告を受けるところ。古今東西、トンネルや鳥居、橋、川などはあの世とこの世の境界、人の世界と人ならざるものの世界の境界として描かれていることが多いと思う。

本映画でも水木が村へ入るときにトンネルをくぐるし、禁域の島の入口や穴蔵の最下部へ通じる道にも鳥居がたくさんあった。ここからは違う世界ですよ~という意味が込められているような気がして、めちゃくちゃ良かった。

2つ目は先程も書いたけれど、禁域から出た後のシーン。もううろ覚えなんだけれど、ゲゲ郎の「妖怪はどこにでもいる。見ようとしないから見えないだけだ」というセリフがとても好きだった。

3つ目は最下部の大きな桜の木のシーン。”桜の下には死体が埋まっている”という迷信が最悪な形で成り立っていて、趣味が良いな……と思った。

▷ちょっとした感想

・糸目でCV石田彰の人(名前忘れた)、ぜったい奥さんである三女じゃなくて長女の乙女さん(名前うろ覚え)が好きだったでしょ。

・次女が沙代ちゃんと水木が話をしているところを見て「もう仲良くなったのね」「さすがなんとか家(名前忘れた)の女ね」と言っていたのマジでキショかった。色々な方の感想ツイ見て思い出したけど、次女は一回駆け落ちして連れ戻されてるんだよね。沙代と水木を見て何を思ったんだろう。沙代を脅した内容からすると、沙代が水木に好意を抱いていることに気がついているっぽいし、どうせ上手くいかない、上手くいくなと考えたのかな。

・序盤で水木が血液銀行の社長(?)に「なんとか製薬(名前忘れた)の社長には可愛がってもらってますから」と言っていたところ、ありとあらゆる二次創作を読みすぎて「可愛がってもらっている(意味深)」にしか聞こえなかった。

・ゲゲ郎がねずみ男に「お前さんまた何か企んでいるのか(うろ覚え)」と言っていて、仲の良さというか付き合いの長さを感じてにっこりした。

・行きの列車の喫煙率、当然時代的なものだけど最悪すぎる。水木には長生きして欲しいから煙草やめて欲しい。

・棒アイス食べるゲゲ郎かわいい。水木に買ってもらったのかな。

・名付けるって大変意味のあることだと思うんだけれど、簡単に「じゃあゲゲ郎って呼ぶわ」とか言って勝手に名前付けちゃう水木、もっと慎重に生きて欲しい。

・水木に騙されてムカついたのか、寝てる水木を布団ごと牢に入れ込んで自分は温泉に行くゲゲ郎、大人気なくてかわいい。

・鍵のかかった牢から抜け出したゲゲ郎に対する水木の感想「牢破りか?」

・手を伸ばしただけで組紐が勝手に手首に巻きついたゲゲ郎に対する水木の感想「奇術か?」

@senamaru78
読書が趣味。オカルト、ミステリーが大好き。