1年間テックブログ編集長としてやったことをふりかえる

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レバテック開発部の瀬尾です。開発業務の傍ら、テックブログや勉強会の運営をしています。うちがZenn Publicationでテックブログを書き始めて1年経ったので、そのことについて振り返れたらと思います。


2024年はレバテックの技術広報が始まった年でした。弊社ではそれまでテックブログはほぼないものに等しかった状態だったのですが、自分がその旗振り役に任命されました。理由は分かりませんが、何名かから推薦があったらしいです。しぬほどtimesチャンネルにテックブログ読んだぞ情報を垂れ流してたからでしょうか…

その後レビューや啓発などしているうちに、いつのまにか「編集長」という呼び名が定着していました。それとともに自分の活動についてZenn側にインタビューされたこともありました。

もろもろの活動を通して、レバテック開発部では月10件ほどの投稿がつづく状況を作れています。これは僕の力だけがすごかったわけではないと思いますが、編集長としてやったことを振り返っていこうと思います。

  1. 書くことに関する啓発

  2. 内容に関する啓発

  3. 所有感を演出する環境づくり

  4. 感想を本人に届ける

  5. 書きたいけど書けない人のための壁打ち

  6. 編集としてのレビュー

1. 書くことに関する啓発

弊社は、主に営業さんの活動によって成り立つサービスを運営しています。営業さん1000人に対して、開発は50人ほどしかおりません。あるチームでは問い合わせや施策PJが集中してしまうことがあり、別チームメンバー僕からでも疲弊していることが見て取れることがありました。烏滸がましくもそれをどうにか救えないかと考えていたのが、最初の原動力でした。

テックブログの担当になることが決まり、技術広報キックオフがありました。人はキックオフが9割。上のことを踏まえて、そこで何故テックブログを書くことを推進するのかを説明しました。

あのチーム助けたいなー。でも自分が手伝える状況ではないなー。そこでテックブログなんです!的な。テックブログを書くことで、巡り巡って隣のチームを助けられるかもしれないし、自分の成長にもなる。そんな一石二鳥なこと!自分が思っていたことを紙芝居テイストにして、そのまま話しました。感じていることそのままをぶつけるほうが威力も出ると思うので、任命のタイミングがよかったです。

2. 内容に関する啓発

かくして、Zenn Publicationとしてのレバテック開発部が始動します。まず僕はテックブログに書く内容について啓発するような怪文書を社内記事に投稿しました。まとめると「テックブログはいいねが多い記事≠いい記事なので、いいね数を気にせずにハードルを下げて、自分の好きなことを好きに書いてほしい〜」というものです。

当時書いたものを一部公開しちゃおうと思います。

いいねが多い記事≠いい記事

いいねが多い記事とはどんな記事でしょう。 面白い記事、役立つ記事いろいろあると思います。

しかしそのどちらも、いいねを増やす観点だと、万人に対して面白いか、万人に対して役立つかが重要になります。 ここを追い求めると、記事の主語(対象?目的語?)が「みんな」になっていきます。

私は、テックブログの記事の主語は「俺」であることが望ましいと思っています。 俺が面白いと思っているから書く、俺が役立つと思っているから書く。 いいね数が伸びる記事は、ここに偶然「みんな」が重なったときに発生するものと思っています。

読まれる記事を書きたい場合は、最初から「みんな」を狙って書いたほうがいいと思いますが、テックブログはそれをする場所なのか?という気持ちです。

音楽番組に例えて「みんな」を主語にすると、紅白歌合戦のような選曲になっていきます。演歌、JPOP、KPOP、アニソンなど全部やります。これ、各アーティスト単位で考えるとまあまあ内容薄いですよね。

テックブログでも同じように薄くなるのではないかなと思います。薄く広い記事になる。 そういう記事ってどういうものか想像すると、たぶん何にもフォーカスしないまとめ記事になっちゃうと思います。

そこから例えば、プログラミング→Typescript→Next.js→ミドルウェア→その中で起こった問題の原因と解決、といったふうにフォーカスを狭めていくと、「俺」が主語の階層が深く対象が狭い記事になります。 たぶんこれにはなかなかいいねが集まりませんが、テックブログとしては気づきを与えられるいい記事になりそうですよね。

いいねを確実に稼ぐにはこの階層を浅めにして、「みんな」を主語にしていくことになると思っています。 でも階層の深い記事も悪くないよね!ということを伝えたいです。

何事もまず先頭にいる人間が理想を示すのが大事だと考えているので、最初にこんな感じのものを公開しました。結果、社内での記事に対する評価感覚はいいね数によらないものになってくれたんじゃないかなと思っています。

3. 所有感を演出する環境づくり

技術広報を盛り上げるためにどうすればいいかのヒントを得るために、下の本を読みました。触り程度ですが、コミュニティが成功するには対象への「アクセスしやすさ」「コミットしやすさ」が重要であると書いてあります。

弊社のテックブログがどうだったかというと、Zenn Publicationを始める前の自社ドメインのはてなブログでは、厳しめのレビューやPRチェックが入ることが多く、とてもコミットしやすいものではありませんでした。

投稿のハードルを下げる

Zennを始めてからは、投稿に至るまでのプロセスを簡単にしました。具体的には、正社員は基本的にレビューなしで投稿OKというレベルまで簡単にしました。これは以下のPodcastで耳にしたゆめみさんの「リスクを取ってでもアウトプットが増える方法を取ったほうがよいこともある(意訳)」という考えに倣っています。

レビューを依頼するにしても、僕やテックリードをはじめとしたレバテック開発部メンバーでレビューを完結できる状態を作りました。

内輪で盛り上がっている空気をつくる

最初の月は初速をつけるために、テックブログはじめましたの記事を皮切りにアドベントカレンダー的なリレーを実施しました。営業日に隔日で出すくらいのスケジュールです。手伝ってくれそうなメンバーに依頼してまわりました。

それから、すべての投稿をSlackのチャンネルで社内に向けて広報しました。ぼくは現在に至るまで欠かさずまるでbotかのようにこの社内広報を続けており、これがメンバーとテックブログの心理的な距離感を縮めている要因のひとつだと考えています。

また、月次で行っている開発部の情報共有会でその月のベストテックブログ(僕の主観)を発表する時間をもらっていたりもします。

コミットしやすくしたり距離感を近づけたりといった活動をおこなって、テックブログがエンジニアのメモ帳くらいの感覚で想起されるようなポジションになるのが理想だと思っています。ここに挙げたものがクリティカルなものではないかもしれませんが、それを目指した活動を継続して続けています。

4. 感想を本人に届ける

上記(3)にあるSlackや情報共有会での活動は、投稿者の制作物に対する「社会からのレスポンス」を、まずは身近なメンバーから本人まで届けるような動きでもあります。また、Xでの外からの反応を収集して特定のSlackチャンネルに共有していたりもします。

僕が趣味で創作活動をしていた経験から、「社会からのレスポンス」は簡単な反応であっても作者を勇気づけるものであり、次のアウトプットへの腰を軽くしてくれるものだと思っております。

またエンジニアの経験としても、カンファレンスや勉強会で登壇したときの懇親会など、感想やFBをいただくことが1番体験いいと思っているので、その体験をテックブログの投稿でも感じられるような環境を作ろうとしています。

メンバーが投稿したらそのままにはせず、投稿者のその後の体験をよくするための活動として感想を届けることは、次のアウトプットを生むための種まきだと思うのでやっていくべきだと思っています。

5. 書きたいけど書けない人のための取り組み

面白いアイデアを持っているのに発信に至っていないメンバーもいると思います。そんな人を支援するための壁打ちも受け付けました。とくに今のようなアドベントカレンダーの時期は、普段書かないメンバーもこれを期にと打席に立ってくれるので、精一杯の支援を行いました。

最近やったことをヒアリングして、それをやる前後で何が変わったのか、それが好きなことだったか嫌いなことだったかなどを掘り下げて、得られた情報をテックブログの見出し程度に構造化します。全体の文章構成づくりをサポートすれば、意外とみんな書けるものだなーと感じております。

他にはSlackのReacjiを利用して、テックブログネタになりそうな投稿を見つけたらスタンプを押して、ネタ帳チャンネルのようなものを作ったりとかしました。自分ではテックブログに書けるネタに気づけないケースもあるので、そのきっかけづくりも重要です。

6. 編集としてのレビュー

テックブログでのアウトプットを安定させるために記事の型化を勧める声をみたことがあります。でも僕は型化するより、各々が作り上げたものに寄り添って編集する方が好みです。

僕は古いインターネットのオタクなので、今の一般化されたYouTubeのサムネイルが好きじゃないです(突然の雑殴り)

人が書く文章構成も、読みやすさの最適解を突き詰めれば誰しもがChatGPTが出力したような統一された文章を書くことになるのではないかと思います。でもそれだとその人が出せる文章のリズムが消えてしまうし、なにより読み手として面白くなくなってしまいます。また、書き手としても自分のリズムで文章を書けないのは一種のストレスであると考えます。コーディングと違って目指すべき外部品質がきまっていない執筆という作業は、創作と同じ負荷がかかるものだと思うので、そのリズムを遮るものは極力排除したいです。

だから僕がレビューや協力をするときは、編集という体をとっています。執筆者が自身のリズムで書いた文章を殺さずに、テックブログの読み手にやさしい形に変えることを目指しています。

これは正直僕に属人化してしまっていることだと思いますが、レビューコメントでは必ずなぜその指摘をしているのかを説明するようにして、書き手としての育成を行っているつもりです。響いてるかはわかりませんが…

ほぼLinterみたいなレビューをすることもありますが、もともと記事を読むことが好きなので苦ではないです。ちなみに、日本語については大学時代に恩師から教えてもらった下の本で強くなれた気がしてます。よみやすい文章構成については、ただただ記事を読んだ数が多かったから身についたものだと思います。ご参考までに…!


まとめ

社内のテックブログ継続に必要なのは、それにむかう内発的動機づけがなされるメンタルモデルを組織内に作ることだと思います。これは文化を醸成することであり、とても根気強い働きがけが必要です。書くとインセンティブがもらえる状態にしたり、物理的に書く時間が与えられたりすることが1番動機づけとして簡単だと思いますが、そうもいかないことが多いはずです。

内発的動機づけをするには、ここまで話したような活動や個人への焚き付けを行い続ける必要があります。そんなこともあって、旗振り役は孤独になりがちです。これを書いている僕も、正直誰かがやってくれるならやってないと思います。僕と同じ立場の人は時につらく感じている方もおられるかもしれませんが、どうか粘り強く頑張ってください。

目指したい理想の状態を定義したら、何人が投稿してくれるようになったらOKなど、その理想の適応範囲をゴールとして決めておくとよいと思います。健康に頑張っていきましょう!