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・のび太の宝島
地球交響楽の感想でも書いたが、この監督の作品が合わない。つまらないわけではなく、なにがいいのかはわかるのだが、俺は好きじゃない。
動きが全体的にせわしない。絵柄も相まってよく言えばコミカルなのだが、アニメ過ぎてあまり好きではない。最初の方で海賊だか宝島の話をして、のび太が「宝島に行こうよ」と熱弁するシーン。大きな身振り手振りで演説をして土管から飛び降りていたと思うのだが、その動きが俺にとってののび太らしくない。この後ドラえもんに泣きつくと思うんですが、道路で側転するのはなんで? のび太ってあんな風に側転できるかなあ。
感情表現がオーバーで、かつ、自分の中にある映画ドラえもんのイメージからずれている。僕の中での劇場版ドラえもんは賑やかでありながらどこか冷静で、それなりのロジカルさもあるイメージなのですが、後述する新恐竜でも、この監督の作品は少し勢い任せに感じられる。重力ペンキで駆け降りるのはアクションが結構すごかった気がするが、映画ドラえもんって人の力よりは道具やタイムトラベルなど技術面でなんとかする印象があるので、そこはらしくない気はする。そこが面白い、というのもわかるけどね。
他の映画と比べても明確に子どもをターゲットに作られた作品のような気はしている。なので、大人が見る場合、ダメな人は明確に苦手だと思う。つまらない、というわけではないが、とにかく合わない。
・のび太の月面探査記
これは好きです。辻村深月はいい作家ですよ。オーダーメイド殺人クラブが好き。
前作の所で述べた通り、僕はドラえもんに一種の冷静さを求めているのだが、これは実にいい塩梅だった。OPの出来が好みだった記憶。ルカとのび太が初めて会うシーンは、風に揺れるすすきが美しく、これを劇場で見たあたりで期待できるな、と思い、実際よかった。
ルカが転校してきてしばらく、正体がわからない間のミステリアスな雰囲気がいいですね。出木杉と下駄箱で話すシーンが好き。この映画は静かなシーンがいいですね。のび太とルカが二人でマシンに乗り、バッテリー交換する一連の場面。ああいう友情の育まれ方がドラえもん映画の好きなところ。スネ夫がルナに惚れるのも、しっかり描写はされるがどこかさりげない。この映画は丁寧な印象がある。
エスパルがとらえられて、ドラえもん一行が月に向かうまでのシーン。BGMだけでセリフがなく、キャラクターの演技だけで迷いと覚悟が伝わってくる。ポスターにも取り上げられていた、この映画の見どころ。スネ夫がうつむいたときに、水面に映った月が目に入るシーンはニクいですね。この辺見返したんですが、乗ろうとするときのび太が枕落としてましたね。細かくていい。
しずかちゃんの機転で定説バッチで逆転する流れ、原作にない道具ということもあり若干の都合のよさを感じなくもなかったですが、それに至るまでの布石はそれまでにちゃんと置かれていますし、道具で逆転する流れは映画ドラらしいカタルシスであり、爽快感もある。
柳楽優弥の演技が若干棒なのはまあそうですが、コナンしかり、子供向け作品のゲスト声優は俺好きなので、ここはマイナスになりません。
別れのシーンについて、俺はあんまりドラえもんの言った理由が腹落ちしていないのですが、いいシーンなのでOKです。「楽しかったね」というセリフがいい。これが全てですよ。
・のび太の新恐竜
これはねえ……私のび太の恐竜2006が思い出補正もあって大切にしているんですが、それとコンフリクト起こしたんですよね。
のび太が恐竜の卵を発見するのが裏山から化石発掘体験コーナーで拾うように変更になったことについて、これ自体は嫌いじゃないです。2006の(ひいては原作の)のび太が珍しく頑張っているあたりは好きだったのですが、せっかくリメイクするなら変更してくれた方が面白いですしね。発見してから家に帰るまでに、のび太が電車に乗ってた場面があったと思うのですが、ドラえもんで電車って結構レアな気がする。
キューとミューを故郷に返す旅路で、オリジナルの道具がたくさん出てくる。これについて、俺はあんまり好みではないけれど、仕方ないとも割り切っている。ただ、友チョコについては桃太郎印のきびだんごでよかっただろ。あれ、終盤の友達だから、の下りやりたかっただけだろう。映画ドラえもんはこんなこと考えるような奴向けではないけどね。
卵からかえってから、キューが飛べないことにのび太が自分を重ねる描写を入念にしているのも、ちょっとわざとらしさはありつつも、のび太の成長譚を描こうという気配はあったし、それ自体は好き。双子じゃなくてもよかったんじゃない? と思わなくもなかったが、必要性だけで物語を判断するのもつまらん。書いてて思い直したけど新種の恐竜なら飛べる種類なのかミューがいないとわからんから必要だったわ。
この双子恐竜との交流は、2006を思い出として抱えている俺でも楽しめたんですよ。宝島と同様、動きや絵柄に合わないとか苦手だという感情を抱きつつも、それを踏まえてもまあ悪くはないと思っていたんですよ。
ただねえ、ピー助に出てこられると流石に話が別なんですよ。
ご丁寧に2006にも出ていたボール遊びまで描写されると逃げ場がない。間違いなくピー助だ。
正直、劇場でピー助が出たときは嬉しかったんですよ。「わあ、ピー助!」と思いました。「あ、ピー助……」とつぶやく子どもの声もあり、小さい子でも知ってるんだなあと内心驚きました。ただねえ、これは何度も言う通り思い出として強いんで、出てこられちゃうともう俺の中ではピー助>キューとミューという位置づけになってしまう。
そもそも、俺は映画ドラえもんって作品ごとに全部別だと思っているんですよ。ちょっとアイテムがインテリアとして出てくるくらいならばファンサービスとして俺も好きではあるんですが、こうもはっきり出されると、もうこの新恐竜は2006と明確につながりがあるのではないかと思われる。さすがにこれを切り分けるのは難しいよ。こうなると、もう今作ののび太は浮気者のごとく見えてしまい、感動的なシーンをやられても、浮気相手に言ってるんだよなあこれ、という冷めた感情で見てしまう。ピー助というものがいながらお前……。
この後、キューが飛ぼうとするシーンも妙に長いなと思ったり、浮気者相手に雑にしずかパパのセリフぶち込んできたなと思ったり、いきなり知らんカードの設定がでてきたのに困惑したり(TPぼんを知らなかったので)、のび太を襲う恐竜も物語に都合のいい敵すぎない?と思ったり、隕石のシーンもピー助のことを気にしてしまったり、タイムパトロールについてももう少し待とうばかり言ってるなあ、と思ったり、ちょっと気になる点が多すぎる。これは俺の見方が歪んだものあるが、やっぱり勢いというかやりたい展開のために無茶しているところはあったと思う。これタイムパトロールじゃなきゃだめかなあ。