3月18日(月)
23時55分。クアラルンプール行きの飛行機に乗る時間、自室で日記を書いている。ジャカルタに行けなかった。数日前から発熱し、準備も間に合わず、ごはんも思うように食べられないことから断念した。行けなかった悔しさと、少しの安堵で胃酸が上がる妙な感覚になる。
ありがたいことに、マイマイのジャカルタ旅行記を読みたい、と言ってもらった。そして、今回の「ジャカルタ」を私から成仏させるためにも、行ってない日記を綴ることにした。
たいてい、事前に日記を書くと決めているときは、何を書くかおおよそシミュレーションをする。飛行機の中ではキキについて書こうと思っていた。
私は小さい頃、「魔女の宅急便」の主人公 キキになりたかった。大人ではない彼女が、知らない街で不器用ながらも一生懸命に生活をする姿がキラキラして見えていた。
旅立ちの夜、街明かりがついた夜空を、赤いラジオをつけながら飛んで行くキキ。きっと、クアラルンプールへ向かう飛行機から見る東京の景色は、彼女が見ていた景色と似ているんだろう。そんなことを日記に書こうと考えていた。
ホウキにまたがり、高い高いをしてもらっていたあの家と、いま、同じ場所にいる。私はまだ、キキになれなかった。