12月も半ばを過ぎ、いよいよ2025年も残りわずかとなりました。この記事はmstdn.beer Advent Calendar 2025 19日目の記事となります。
巷でハイボールを大量に飲む酒魔王というイメージ操作をされていますが、そんなにたくさん飲めないし、本当はクラフトビールとワインが大好き、しあと申します。(唯一、焼酎が苦手です)
てすとくんさん、今年もアドベントカレンダー開設ありがとうございます。
今年はあまりクラフトビールを飲まなかったかもしれないなあ……と先日iPhoneのカメラロールを振り返りながら思いました。ほとんど家飲みになり、あまり通販をしなかったので、旅のおみやげにクラフトビールを買ってきて飲むことはあったけど、たまの外飲みでクラフトビールのある店に入ったら飲む、という感じでした。
家でも撮りますが、特に外飲みする時、つい飲んでいるビールの写真を撮影するようになってもう10年くらい経ったかもしれません。
1年かけて撮影した写真を振り返りながら、ふと思いました。
「これは記録なのか?」と。
飲んだビールを忘れないための記録として撮影している部分もありますが、だいたいがSNSに公開して誰かに見てもらおうとしている、そんな自分の撮影動機を振り返り、今や「写真」というものの存在と役割が大きく変わっていることを改めて考えてみました。
かつて、写真は限られた人しか撮影することの出来ない特権性のあるものでした。高価な機材を持ち、撮影技術のある撮影者が独占していた技術でした。それが、スマートフォンの普及によって誰もが容易に撮影できるようになった。ここでひとつ、写真に大きな変化が起きた。撮影することがさほど重要ではなくなり、写真が閲覧者のものへと移ったと思います。『新写真論』(ゲンロン叢書)では著者の大山顕さんがこのように表現しています。
「撮影ー現像ー閲覧のプロセスがスマートフォンというデバイスのもとで統合された」。
そして、世界で閲覧されている写真の大部分はSNSで公開されているものです。かつての写真はもっとクローズドなものでした。またSNSで公開されている写真は瞬時に他者に閲覧され、それをネタに反応が返ってくる。写真から「時間」が失われ、全てが「今」のものになっている、と言えるのではないでしょうか。それについて、大山顕さんは「スマートフォンで撮られSNSでシェアされる画像に対しては、従来の『写真』とは異なる名前を与えるべきかもしれない」と述べています。そうかもしれない。
自らが撮影する写真も、時間が経てば「記録」としてカメラロールに残るという側面はあるにせよ、「今」を撮影し共有して気心の知れた人たちと共有する。会話をする。その為のものとなっている、と感じます。
大山顕さんはこう述べています。「レストランで料理を撮ったり、旅行に出かけて風景を撮るのも、ほとんどすべての撮影は経験を確かめるための行為なのではないか。おそらくもともと写真とはそういうものだったのだ。かつてフィルムカメラの時代に、撮影が経験のしるしというだけではなく著作物でもあるように感じられたのは、単に写真を撮るのにコストがかかったからだろう。
結婚披露宴で参加者がみんなあくまで自分のスマートフォンで新郎新婦の写真を撮りたがるのは、写真を手に入れたいからではない。それが目的なら、最も良いポジションから撮られた誰かの写真をシェアすればいいだけのことだ。そうではなくて、披露宴に参加して花嫁花婿を見たという経験を、シャッターボタンを押すことによって確かめている。というよりも、シャッターを押すことによって経験化しているのかもしれない。スマートフォンのシャッターボタンはいわば『経験値UPボタン』なのである」。
わたしは様々なビールを飲み、シャッターボタンを押すことでそれを画像に残し、経験値を上げている。その「今」をSNSにアップし様々な人と共有することでおしゃべりをする。ある日ふと、カメラロールに並ぶ自らの写真を振り返り、確認する。その写真たちはある意味「記録」と呼べるかもしれないが、自らの「経験」を収めたものである。そのカタチある「経験」は日々カメラロールに蓄積されていく。例え記憶が薄れゆくとしても。
であるならば、この時代の写真家の役割とはなんなのか。それは、「その時間、その場所にいること」と大山顕さんは述べます。
何よりも自分が今、何時何処へ行き、その場所にいて、何を目にし体験するのか、それがいちばん貴重なことであり、誰かが代わることはできない。
機動力が重要視される時代、自分に向いててよかったなと思ったりします。AIが発達している今、より実際に「その時間、その場所にいること」の意味は大きくなっているように思います。
2026年が皆様にとって楽しく実り多きものでありますよう、心より祈りつつ、終わりの言葉とさせていただきたいと思います。

写真はクラフトビールとワインのお店で飲んだ愛媛 興居島のいよかんラガーです