御徒町と二十歳。

詩歩
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「初めての東京生活は御徒町」というと「渋いね」と返ってくる。そんな町で多感な時期を過ごした。

上京してすぐに山手線沿いに住めたことは、幸福なことだったのかもしれない。100円自販機があるような地域だったけれど、酔っ払いにあとをつけられるようなハードモードさのなかにも、どこか懐かしい匂いのする夏が落ちていた。

意気揚々とやってきた場所。右も左も分からないまま、社会から外れながら、世界に漂う。

恵比寿ガーデンプレイスと御徒町。初めての居場所だった。深夜3時のエイトと夜な夜な歩き回る高架下と駅前のローソン。

そういえば、何度も、この街で間違えて、裏切って、優しくなって、毎日を生きていた。こうして、過去を美化しているわたしを、かつてのわたしは馬鹿にするだろうか。