孤独感は最高のスパイス

詩乃 / shino
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この木曜日、金曜日の2日間だけで、仕事用の原稿を7本アップした。5本は比較的ライトなインタビュー記事、2本はそこそこ大がかりなインタビュー記事なんだけれども、ただ文章を書き続けていたら完成してしまった。

そのうえで、ここ(しずかなインターネット)には毎晩1本ずつ文章を載せているので、単純な話、7本ではなく9本の原稿をあげたといっても一応差し支えないのだろう。

わたしは、比較的筆の速いタイプのライターだと思う。それこそ、昔は月に50〜60本の原稿を書いていたことさえある人間だ(それがいいとは思わないけれど)。

ただ、やっぱりある程度仕事が安定してくると、月にそう何十本も書かなければならないような事態はまぬがれるようになってきて、ひとつの原稿に対して使える時間が増えていく。それゆえ、週に1本しか書かない、なんてことも案外珍しくなかった。

そんなわけで、久々にずっと原稿ばかり書いているわけなんだが、それはひとえに孤独だからという理由に尽きるだろうと思う。日曜日の夜にコロナになり、発熱して、ちょうど5日。今日までがわたしの外出自粛期間に該当しており、言葉どおりのひきこもりをまっとうした。

朝から晩まで家にいるうえに、喉が痛すぎたので、必要な打ち合わせ以外はすべてリスケさせてもらっていたわたしのスケジュールは、概ねまるっと空き散らかしているわけだ。そうなると、わたしに残された選択肢はたった一つしかなく、目の前にある原稿をただ書く。それだけだった。

文章を書くという営みは、良くも悪くも打ち合わせや作業の合間にできるようなものではない。せめて1〜2時間はまとまった時間がいるし、気が散らないような執筆環境も必要だ。

誰と話すわけでもなく、どこに行くわけでもないこの時期、ただタイピングだけに没頭できる時間を使わずしてどうするのだと、わたしはなかなかに心躍るような気持ちで文章を書き続けていたのだった。

そして、そういう2日間のマラソンを終えた今、この文章を書きながら思っているのは「めちゃくちゃ文章が書きたい」。すなわち、世も末である。

孤独になると、すごく思考がクリアになる。煩わしい思考の一端がどこかに溶けたかのようになくなり、なんでか集中力が増すようだ。目の前の原稿をただ良いものに仕上げること以外の思考がなくなり、ほぼトランス状態さながらで文章を書いていた。

人との対話から生まれるアイデアやヒントから文章を書くことも多い人間としては、ずっと孤独といわれるとなかなかしんどいものがある。けれども、定期的な孤独は、文筆における最高のスパイスになり得るのだと、再自覚をしたのだった。

定期的に東京を離れて旅に出かける理由は、まさにその「孤独感」を意図的に生み出すためだったのかもしれない。ひとりの時間を、誰も自分を知らない場所で設けることは、思考にとってすごく良い影響をもたらしているようだ。

と、そんなわけで、明日からは社会復帰を果たして通常の人間に戻ります。みなさまもどうぞ、心身の健康にはご留意くださいませ。

@shino74_811
暮らしが好きな旅の人。属性は編集者。もっとも気を抜いて文章を書いている場所なので大した期待はしないでください。