人が好き、って言える人が羨ましかった。ずっと。
誰もいない文化祭実行委員室で、お弁当を食べた。今日はどこのグループに合流しよう、なんていうくだらないことを考えずに済んで、気が楽だった。
そう、グループ。この概念が大嫌いだった。「誰かと、いつも一緒にいなければいけない」という義務感が息苦しくて。
「親友になろう」と言ってくれた友達に、「親友とか好きじゃないんだ」と答えたのは小学生のこと。人と深く関係を築くことが、鬱陶しくてたまらなかった。
教室にできた、グループという飛び地をふわふわと行き来しながら、気持ちはずっと一人だった。立ち入らない、立ち入らせない。私の世界は、私が選ぶ世界。そんな10代だった。
人に左右されず、自分のペースで在る。これは、今も大事にしたいことの一つで、孤独な時間はいつだって尊い。
ただ、人は、私を思いがけず救ってくれる。そのことに、今さら気づいてしまっている。
毎日、誰かの存在に救われている。泣きたいほど嬉しくて、感謝を伝えたくて、でも悲しいぐらい不器用だから、1グラムの気持ちすら伝えられない。どうやって近づいたらいいのかも、よくわからない。子どもみたいに突っ立っている。困り顔で笑ってる。
たぶん、今、人が好きだ。あの頃の自分が驚くぐらい、きっと好き。
一人の部屋で、夜が更ける。身体を覆う針は、抜け落ちる素振りも見せないけれど。つぶやく。
ありがとう、本当にありがとう。私を私として知覚してくれるすべての人へ。