どうしようもない夢の記憶が

本当に、どうしようもない夢を見た。

世の中の倫理が嫌な顔をすると思うから、夢の内容には触れない。

胸が潰れそうな場面で目が覚めて、隣で寝ていた夫をぎゅっと抱きしめた。夢でよかったと、心底ほっとした。

昔、隣のクラスの話したこともない男の子を、好きになった夢を見たことがある。中学生の頃だ。細かい部分はかなり曖昧で、もしかしたら、向こうが私のことを好き、という内容だったかもしれない。

いずれにせよ、20年近く前の夢を今でもおぼろげに覚えているのは、それから数日間、その子を目で追ってしまったからだ。それまで彼を意識したことは一度もなかったのに。

笑顔が可愛いな、と思った。夢の記憶が、現実を少しだけ侵食した。そのことが強く印象に残っている。

夢は、私の中で私から逃れて、突然暴れ出す。統制できない自分が、自分自身を塗り替えてしまう。

目の前の確かな現実と、私の脳内で繰り広げられる夢は、等価であるはずがないのに。それなのに。

時折、夢と現実が混色する。どうしようもない夢を見て、目が覚めると、世界の色が少し変わっている。

@shiori1205
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