映画/PERFECTDAYS

三角/misumi
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人それぞれに生きている世界がある。見えているもの、感じ取ることは人それぞれ。人の数だけ世界がある。

だけど違う世界を生きていても、お互いに影響し合うものだ。時間と場所を共有している私たちは別々の世界が常に重なり合った状態を生きている。自分の持つ価値観、世界の見え方感じ方が揺るがないものだとしても、過ぎゆく日々が全く同じ一日にならないのはその時々に関わる人の世界の影響を受けるから。世界が、人生が、交差する瞬間に影が濃くなる。影の濃さもその定まらなさも、それらは嫌なことでもこわいことでもなくて、一期一会の味わいなんだと思う。

偶然の木漏れ日の美しさや自分で決めたルーティーン、日々のできごとひとつひとつがパーツとなって自分の世界を作り上げていく。主人公の平山は自分の世界がどんなもので作られているのか、自分の世界にどんなものが必要なのか(必要でないのか)知っている人だ。世界の構成要素ひとつひとつを、認識し味わえる人だ。(かといってその世界は容易く手に入れたものではないことは姪や妹とのやり取りから伺える。平山は自分で選んで生きている人だ。選ぶことを、選んだ人だ。彼の世界で彼は主人公であるということだ。)そして、他の誰かの世界の鱗片にも気付き微笑むことができる人だ。自分の世界があるということ知っている人は、他人にもまた世界があることを知っている。知っているということは、ただそれだけで優しさなんだと思う。