ゾウってどうやって運ぶの?という会話が聞こえてきた。誰の口からいつ聞こえてきたのかは忘れた。ふと思い立ってその方法を調べてみたけど、「ゾウを運ぶ」という言葉から思い描いた像と実際の工程に開きがあるように思えて、すぐに読み進めるのをやめてしまった。
昨年の暮れ、落ち葉を混ぜ込んだ和紙を漉く実験をした。白い平面にまばらに乗ってくる葉をどのように漉き込めるか、職人の手を借りて繰り返し試行する。大きな水桶の中に腕を入れてかき混ぜ、上澄みを掬って定着させる。沈んでは浮かぶ落ち葉がつくる模様が記憶の在り方に似ているように見えた。
沈殿した記憶の澱が浮かび上がった瞬間に、手を加えて何らかの像を結ぶこと。それとデザインの仕事には何かしら近い回路がある気がしていて、こうして何か身近なものを書き留めることでそれを考えていきたい。