下半期になり,以前にもまして読書の占める時間が増えた.自分が,組織がこれまでと変わらざるを得ない環境に陥ったからである.
変わるためには現在地を把握して自分がどの方向へと変わればよいのか,また足りないことは何なのかを考えざるを得ない.そして,考える方向への知識,答えが「あるだろう」と期待をして何冊も何冊も読書する.
読書は人生を豊かにするというが,ふと自分の活動を振り返ってみると,果たして豊かになっていたのか甚だ疑問である.量を読むことで,ある程度体系だった知識や変わるための術を手に入れたと「錯覚している」と気づいた.知識は確かに役に立つ.○○という活動,テクニック,スキルは確かに役に立つのだろう.しかし再現性はない.正確には「再現性を得られる」という十分な仮説とその理由,環境や条件を考慮しながら読書できていないため,「再現できない確度が高い」.暗黙的に,好意的に解釈した術を手に入れたと錯覚していた.
この自身の読書方針は極めて目的志向で,目的を満たすために探索的な読書方針を取っていたと説明がつくが,そもそも選択した際にこの志向性のpros/consを十分に理解した上で実施していたとは言い難い.これで自分が変わるのだろうか.周囲を変えられるのだろうか.
というわけで,今度は「一文一文を味わう」という読書志向に変えてみた.味わい方は「著者の主張・ユースケースに対して自分の置かれている環境・活動を,著者の基準をもって比較可能かを精査し続けること」.この志向性のメリットは,どのような観点で有効でどのような観点だと有効ではない可能性があるか,仮説を持って主張の再現性を確認できるようになること.デメリットは主張の裏付けが経験のみに基づくものや曖昧だった場合に精査不能であること,本自体のフィットリスクが判断が遅れること,また分間読書文字数が下がること だと思う.実際,2日必死に読書しても1日30ページしか進まなかった.一方で,著者の基準を持って考えると単純な「良い・悪い」や「○○すべき」ではなく「今Aという観点では基準のこちら側,Bという観点ではあちら側」のように現在地を把握するという観点で役に立つことがわかった.これは今の自分の志向に合っている.
もう少し,今の自分を知ろう.自分を形作る習慣を知ろう.一度で,短期間のインスタントな知識摂取で解決したくなる引力に抗おう.自戒.