英国史ものと聞いて、早川書房のKindleセールの時に買った
マンホールに落ちて入院しているグラント警部のお見舞いに来た舞台女優マータが英国王朝の歴代王の肖像画を持ってきたところから物語は動き出す
表紙の肖像画はリチャード3世
王位継承のために幼い甥2人を殺した殺人鬼とされる人物だが、果たして本当にそうだったのか…
グラント警部の警察としての勘と経験を頼りに、「むくむく子羊ちゃん」ことアメリカ人歴史研究生キャラダインを相棒に真実に迫っていく
その時代の権威である聖トマス・モアの歴史書は当世に書かれたものではないという理由で切り捨てて(リチャード3世が死んだ時聖モアは8歳!)、事件当時に書かれた記録に当たろうとするその姿勢は歴史研究に必要な姿勢そのものである
そして「歴史書」と呼ばれるものがいかに「書かれた当時(≠出来事の起きた当時)」の情勢に影響を受けているか、これが過去の出来事の真相を解き明かすのにいかに足枷となっているか…
バイアス掛かりまくりの書物を読んで歴史を紐解いた気になっている歴史家は、グラント警部に“ばっかみたい”と思われても仕方ないのである
そして、2人の見つけ出した歴史的事実は…
散々擦られた一説かーいwというオチも付いて、歴史論文ではなくて推理小説であることを思い出させてくれるのも流石である
英国史に造詣が深くないので、中身はいまいちよくわかってないけど、真相に近づいていく過程はなかなか面白かった
叙述トリックを読んで喜んでいるような輩よ、こういうのが推理小説ってやつだ!