ベネターの著書が読みたかったけど、読むための入手のハードルが自分にとってはそこそこ高いので、これを読んでみることにした
誕生害悪説を見ていく中でそれを論破して、誕生肯定説を提唱するという内容であった
「一番いいのは生まれてこないこと、次に良いのは来たところに早く戻ること」という考えは、古代ギリシアでは一種の時代精神であったとされる
そして、それは文明交流によって世界中に広がっていった
(わかりやすいのはお馴染みソポクレスの悲劇「オイディプス王」。オイディプスがなぜこんなにも生まれてきたことに否定的なのかというと、生まれてくることを「望まれていなかった」から)
何で「生まれてこなければよかった」と思うんだろう?
それは現実が空しいものにすぎないから。どんなに良い人生を送ったとしても、一時の悪いことで全てがパーになる…それを知らないほうが幸せだ、いうことになる
「生まれてこなければよかった」は絶対に実現できない願望(生まれてしまったからこんな事を考えてる!)だから、「死んだほうがいい」とはイコールには決してならない
原始仏教の場合、輪廻転生が当たり前の世界を前提としていて生きる事は苦しみな訳で、涅槃に至る事で輪廻から解放されること、つまりもうどんな世界にも生きなくてよくなる境地に達する事が良いこととされる
人、物や愛欲から離れてそれらに執着しない境地に達するために修行をする
一方ニーチェは宇宙は繰り返している(永遠回帰)としてどんな運命も受け入れようとする「運命愛」を語る
「生まれてこなければよかった」という思想が2500年もの間考えられてきたのは、自分が生まれてこなかった現実にはあり得ない世界線というのが魅惑的なんじゃないかと思った
絶対にあり得ないからこそ考えを巡らせやすいというか