嫌いなひとがいる。
嫌いなひとというか、嫌いなキャラクターがいる。そのキャラクターは人気作の人気キャラクターで、辛い境遇にいて最後もかなり可哀想な終わり方をする、そんなキャラクターだ。
わたしはそのキャラのことはかわいそうだなと思うし、そのキャラが好かれているのもわかる。でも、わたしは正直、あまり好きにはなれなかった。
人気作の人気キャラクターなので、表立ってそのキャラを「嫌いだ」というのはなかなか憚られる。そもそも、キャラクターのことをすき!というのは歓迎されても、たとえどんなに嫌われているキャラクターであろうとも、好きなひとがいる以上は大勢に見えるところで「嫌い」だなんて言うべきではないともわかっている。
そのキャラを嫌いな理由はわからない。ただなんとなく、鼻につくというか、癇に障るというか…でもやっぱり、明確に「嫌いなところ」を挙げられない。でも、好きにはなれない。
人気作だし、人気キャラだし、よくTwitterのTLにも流れてくる。単語ミュートもしてみてるけど、Twitterのことは信用してないからあまり期待していない。
嫌なら見なければいいのだが、個人で見ないようにするにも限界はある。でも、かといってそのキャラを好きなひとたちに「TLに流さないでください」なんて頭の沸いたことを言うほどわたしは馬鹿じゃない。
これが実在の人物なら、もっと簡単だったのに。アカウントをブロックすればいいだけの話だから。嫌いなキャラとの付き合い方は、ある意味で、人間よりも難しい。
その作品を好きなひとに、「このキャラが嫌い」なんてことは言えるはずもなく、ひとりで燻る気持ちを抱えている。わたしも、あのキャラのことを好きになれたらよかったのに。
そのキャラに似ていると言われているキャラのことは大好きだったりするのに、どうしてあのキャラはダメなんだろう。自分でもよくわからない。けれど、自分の気持ちを偽ったり、「そんなことない!あのキャラを嫌いだなんておかしい!」と自分で自分のことを苦しめるのも嫌なので、わたしだけは、「あのキャラを嫌いでもいいと思うよ」って自分に言ってあげたい。
いつかもっと大人になれたら、嫌いだったキャラのことを好きになれる日が来たりするんだろうか。今はわからなかった良さが、いつか理解できたりするんだろうか。
そんなことを楽しみにしていれば、時が過ぎていくのも、たぶんそんなに怖くない。
いつか、こころの中であのキャラに、「あのときはごめんね」と思えるくらいの大人になれたらいいなと思う。