ゲ謎感想(初回)

だ不
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公開:2023/11/30

当主が死んだ一族、因習村、後継問題、余所者の男が二人――――何も起きない筈がなく……

じゃねぇんだよ。『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』という映画、とんでもない作品だった。

前情報が「容赦も救いもない」「糸目石田彰」ぐらい、TVアニメ6期(沢城鬼太郎と私は呼んでる)は時間が合えばたまに見る程度だったものの、あの、ボロボロになりました。

※軽いネタバレあり

最初はヤバい村のヤバい一族の当主が死んで、ヤバい後継問題からの殺人事件という金田一によくある展開から始まるが、これは金田一ではなくゲゲゲの鬼太郎。そりゃ妖怪の仕業でしょ、と。思ってたよな。悪い妖怪がいるんだなって。

死んだ全員が片目の眼球抉られているし、カラスが眼球くわえてるし、2番目に死んだ人は木に突き刺さって死んでるし。どう考えても人間業じゃない。まあPG12も納得。無限列車よりエグさはあった。

とか思ってたら、その、グロとは別のエグさがぶっこまれて「この子がなにしたってんだよ……(その1)」から一族の醜悪さが本物の吐き気を催す邪悪だった。沙代ちゃんが自分にとりついた妖怪を使って地下室で殺戮した時も一々容赦なくて、眼球がパイプ通って出てくるところ見て「(殺戮も監督も)本気じゃん」と思った。

その後の黒幕が本当に無理で「この子がなにしたってんだよ!!!!!!!!!!(その2)」になった。あの桜ちょっと綺麗だな、って思った数秒後に「ジジイ!!!!!!!」ってなった。人間、悍ましすぎる。でも立ち上がって爺に向かっていく水木がかっこよくて泣いた。(1回目)

結局村の人間は一人残らず妖怪の怨念により死亡、因習村も廃村という本当にヤバい村とヤバい一族へは容赦のない鉄槌が下されたわけだが、村民ぐるみの悪事だったわけだしこれは正直納得。お札貼りまくって子ども抱えて家に逃げる母親が無情にも襲われるところ見ても、心の中でニンジャが「インガオホー……」って言ってた。

あと最初の電車で煙草の煙に咳き込んでいた少女持ってた人形が、地下室の工場(?)にあったのってそういう……余所から来た人間にも容赦ねぇじゃん、よく水木生き残れたな。

現代戻って鬼太郎が廃村に残った怨念を退治する時も泣いた。(2回目)70年間そこにいたんだ……。ゲゲ郎と時ちゃんの会話のシーンも涙がボロボロ出てきて止まらなかった。最後も仲の良かった沙代ちゃんが迎えに来て、時ちゃんと二人で成仏できてよかった。(あのまま時ちゃんが世継ぎになっていたら、確定であの二人がチョメ……されていたし)あの二人が癒しだったから、それで少し救われた。

映画の作画も音楽もあとアクションシーンもかなり良くて、ゲゲ郎(CV:関俊彦)が好きな男過ぎて最高だった。のらりくらりながらも、一途で純愛。水木も可哀想な男ながら、男前だった。最初は盤石な地位を欲していたけど、最後に爺に交渉されても斧振り下ろしたところでゲゲ郎や沙代ちゃんとの出会いで変わったんだなあ、と思った。ゲゲ郎とのことを全て忘れてしまったのも、良かったのかもしれない。

ここまで、エンドロール前の話。

ここからは本当にがちがちのネタバレ。

エンドロール中、突如流れ始めるイラスト。とある小屋を訪れる水木が目にしたのはお岩のような女と包帯ぐるぐる巻きの男。包帯の男に追いかけられ逃げる水木。東京に戻ってきたものの、気になってしまいもう一度その小屋を訪れる水木。するとお岩のような女も包帯の男も死亡しており、水木は女の方を葬ってやろうと墓場に向かう。(多分包帯の男は体がドロドロみたいになっており持っていけなかったんだと思う)包帯の男の赤い眼球が身体から離れる。

エンドロール後、Cパート。女を埋めた水木が立ち去ろうとすると、埋めた土の中から赤ん坊の泣き声が聞こえる。振り返ると土が蠢き、中から赤ん坊が出てくる。それを見た水木は子どもを抱え「墓場から生まれたこの子どもはバケモノだ。ここで始末しないと」と墓石にその子どもを打ちつけようとする。それを草の隙間から見守る目玉おやじ。水木の脳裏に過る赤い桜とそこに佇むいつかの相棒。赤ん坊を掲げたまま動けない水木――

「鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎」(タイトルドン)

どうも、ご挨拶が遅れました。拙者、片方が相手のことに関する記憶を失った組み合わせおよび関係性を愛する者です。

正直Cパート号泣ですよ(3回目)。水木の脳裏にゲゲ郎が過ぎった瞬間「あ、ダメだこれ」と思った時にはマスクの中に涙が溜まり始めていた。なんかその時思い出したけど「あれ、確か水木って鬼太郎育てた人じゃなかった……っけ?」となり、映画館出てすぐに調べた。合ってた。来場特典の画像も見たんだけど、そういうことっすね……。

水木がその後ゲゲ郎や村でのことを思い出したかどうかはわからないけど、これも因果。記憶を失くしても引き寄せられる、逃れられない運命がある。電車の中で水木がゲゲ郎を見た時から、互いの運命の歯車がぎちぎちにかみ合ったんだろうな……。変な意味じゃなく、映画の中で言ってた水木の運命の人はゲゲ郎、そして鬼太郎だったんだア……。運命は愛や恋だけではない、のだ……。

総括。最高。先述通り映画としての完成度もさることながら、Cパートへの落としどころがもうなんか最高すぎてダメだった。本当に面白かった、時間があっという間だった。

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@sleepy_8th
うどんよりそばが好き erla.jp/polepole