ヨーロッパ人が来る前までのアメリカ大陸の文明ではなぜか車輪が使われていなかったという話を聞いて、その理由を以前考えていた。
彼らが車輪というテクノロジーを知らなかった(あるいは思いつかなかった)というわけではないことはわかっている。なぜなら車輪のついたオモチャは見つかっているらしいので。
ではなぜ彼らは車輪を使わなかったのか?中米の、大陸が細くなっているあたりだと山が多い土地なので、車輪を使うメリットがあまりなかったということは言えるだろう。しかしメキシコや北米は?南米でもブラジルからアルゼンチンの辺りまでの海沿いには結構な平地があったはずである。
馬は北米産だが、北米大陸ではいったん絶滅している。そうなる前にベーリング海峡を渡ってユーラシアで生き延び、4000年から3000年くらい前に草原の道の辺りで家畜化されたと言われる。そしてヨーロッパ人によって再度アメリカへ持ち込まれた。だから馬がいたから車輪が要らなかったということはありえない。
もっと別の可能性を考えてみる。
安い 労働力をふんだんに使えるような社会では技術革新へのモチベーションが働かない。という話。
アステカやマヤでは支配階層の人々が奴隷を使えたので、何かを運びたければ彼らに運ばせればよく、車輪という新技術の導入へのモチベーションが働かなかった可能性がある、と。
産業革命がヨーロッパ大陸ではなくイングランドで起こり、さらに人口の多いロンドンではなく比較的田舎であるマンチェスターで起こった理由にも、おそらく人件費が関係している。18世紀までつづいたヨーロッパ大陸での戦争特需によるバブル経済で当時のイギリスは好景気だった。それによる人件費の高騰が背景にあった。
AIの無い時代では、万能型マシンである人間を安く使うことができない状態になって初めて、人は代替手段として機械などの科学技術を使うことを考え始めるのだ。
バブル崩壊以降の日本でITをはじめとした技術革新が進まなかった一因もこれなのではないかと妄想している。氷河期による若い世代の人余り状態=安くこき使える労働力がふんだんにある状態が、デジタル化などの技術導入、生産性UPへのモチベーションを下げた。
またそのような社会状況を前提にブラック企業というビジネスモデルが成功するという異常が起こった。
そう考えると、これから少子化で人手不足になるので生産性を上げる方向で考えざるを得ないという状況は、新しい技術を導入していくという点では悪い事ではないのかも知れない。
(何か思いついたら追記、修正します)