ゆめうつつ ゴリッと鳴った 口のなか 血の味じわり 意識広がる
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夜道行く きらりとひかる 通行人 向けられた刃 スマホの画面
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可愛らしく 美しい人に なりたいと 泣き喚けども 醜い破顔
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つかれたな 懐かしき菓子 口含み 大きさ気にし 顔色気にし
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手を繋ぐ 二人の目線 交わらず おとなの一歩 こどもの小走り
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たまご、よっつ 賞味期限が 過ぎている 「新しいのは?」 いける言うたやん

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きみを真似 口から取り出す 言葉でさ 「そういうところ 嫌い」だなんて

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瞼伏せ 睫毛の先に あたる喉 まばたきの数 刺し違えてる

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あのときの 孤独がなぜか 恋しくて プリズムになって わたしを刺すの

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ちりぢりと 爆ぜた星たち 掬われて 向こう岸でさ また流星が

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瞼閉じ 致死量のひかり 分け合って 鉄の箱のなか 白けて融ける

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首筋に触れる毛先を払い除け 鱗粉拭えば飛べないふたり

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つかれたな ああつかれたな つかれたな 伏せる睫毛が 代わりに喋る

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にょろにょろとのびる豆苗と日を分つ 栄養にならないわたしの憂鬱

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LEDライトの白さに当てられて 放散しちゃったわたしの「助けて」
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「大丈夫?」 最後の一粒 とっておき わたしの口に チョコレートをさ

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「まぁいっか」怒りかなしみ呑み下し 生きる他ないこの地獄では

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目を細め 眩い春が とかしてく どうかふたりまで さらわないでね

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踏み外し 桜吹雪に 身を包み 春の死臭よ すべてをさらって

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再生の 季節と謳い ゆるされた 美しき春 奪ったいのち

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ただじっと静謐のなか佇んで 踠くことすらできぬままに

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何処にでもいけると翅をひろげては 絡まる風にただ流されて

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新緑が眼を刺して瓦解する 薫風攫う伸ばす指先

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黒百合がきみのやさしさの使い道 違うと泣いても泪で育つ

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涙壺に静かに流し時を待つ 小さな祈り雨を降らすの

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ゆめのなか あなたさえも 置き去りに 独り占めして くるくる踊る

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くるくると 炎ゆる約束 年毎に くゆる夏に わたし幽霊

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煙突の煙のように消えたくて 飛び降りる日々つばさにかわる

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どきどきと ちょこっとかなしみ ひとつまみ、混ぜられたなら あなたの勝ちね

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放り込む 塵が積もった 下書きで ピカッと爆誕 短歌の惑星

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わたしまだ満足できない!酒煽り 日曜の夜取り戻せぬまま

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体力の更新途絶え読みたい漫画 読めないままに歳がジャンプする

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堕ちてゆく呼吸のとまる頸椎に 口づけすれば安らかな寝息
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もしゃもしゃからぽそり聞こえた「しあわせ」が ペトリコールと君の寝息に吸い込まれてく

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赤ちゃんのベビーベッドと一緒だね 好きなものたちにまもられ眠る

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秋蚕は 孵ることなく 白けてく 呼出桑の やわさ知らぬまま



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先を行き踊り続ける白線上 舞台袖はねパ・ド・ドゥできない貴方の特権


