今住んでいる加賀市の知人夫妻の家へ少しお邪魔する。家で飼っている猫けいちゃんをお世話してくれたお礼にお土産を届けるためだ。
夫のYさんは、僕の大学の後輩。だけど学科が違うしマンモス校だったから一度も学内であったことがない。知っている一学年下の後輩の名前をあげても知らないし、Yさんの学科で知っている人の名前をあげても知らない。同じ大学だったからとはいえそんなものだ。
夫妻は空家をリノベーションしたと話に聞いていたが、一度も家へ遊びにいったことがなかった。それで、実際にお邪魔してみると見事な住まいになっていた。天井や壁を大幅に取り外されており、開放感が感じられた。それでいながら、断熱材を入れていたのか部屋は暖かかった。僕は新しく住む家のリノベーションのことを考えているから、ペンキは何を使っているかとか、カーテンにはミシンをつかっているのかとかそんなことが気になって仕方がなかったが、ひとつひとつ手入れされた家には使用者の理想が詰まっていることに感心した。それは収納スペースに現れていたと思う。
僕はこれまで住んできた家でいくつかDIYしたものがあるが、そのほとんどは棚だった。自分が必要なものを必要な時に取り出ししまうための棚。それは本棚だったり、機材をしまう棚だったりする。自分にとって使い勝手の良い収納は自分で作らなければならない。そんなことを思わされた。
そういえばオックスフォード英語大辞典の初代編集主幹サミュエル・テイラー・コールリッジは辞書編纂のプロジェクトで最初にしたことは、編纂室に大きな棚を作ったことだった。なにかを始める時に着手すべきことは、思考の整理棚である。それは自分にあったサイズで作るべきだ。