友人と遊ぶ予定の日。前日夜に行き先を決めきれずに就寝してしまったのだけど、朝起きて改めて連絡を取り合い、やはり海のほうにいこう、みかんを狩ろうという話にまとまった。いざ出発。と書くとスムーズだが、私がもたもたしていたせいで時間を少し後ろにずらしてもらったり、これでもう一本で最寄り駅までいけます、という電車に乗るまではかなりせわしなかった。

駅前で事前に調べておいた無人の案内所の案内を確認し、今日の当番園に友人が電話をかけてくれた。当番園というシステムの存在をここで初めて知る。事前に予約をしてください、と念押しされていたのに、だいたいの予定時刻を告げるだけで特に名前も尋ねられないラフな対応に肩透かしを食いつつ、気になっていたお昼の店へ。
海辺の食堂というのがぴったりの、中に入ると座敷とパイプ椅子の席に分かれた店内で座敷席を指定され、座ってメニューを見ながら友人と悩みつつフライ定食×2とお刺身単品、焼き魚単品を注文。食事の到着を待っている間にも、お昼時ということもあってか、どんどん人が入ってくる。楽しみにしていたさざえごはんは、今日はさざえがとれなかったようで販売中止しており残念。私の席の背面には写真付きのメニューが貼られていて、自家製コロッケも気になりすぎるのだが、海辺の街でこのチョイスをする勇気がない、しかし食べたい、と思いつつ、頭上のテレビで放送されている野球中継を振り返りつつ、先日初めて動いている大谷選手をテレビ放送で目撃したと思ったら、ほんの数分でホームランを打ってびっくりした、この人はすごいというけどいつもこんなに簡単にホームランを打つのか、とパートナーに尋ねたら、さすがにそれはない、あなたは記念すべき瞬間を見た、といわれたというエピソードを話した。野球のルールに無知な人間同士の、野球について知っていることを話す時間。
そうこうしているうちに定食、単品メニューと食事が次々到着し、机の上がにぎやかになる。

ちいさいアジは一尾で食べ応え満点、というサイズではないのだけれど、身がふっくらしていてよかった。久々にこんなにご飯をもりもりと食べました。定食に添えてあるさつまいもが意外に好みの味でびっくり。お弁当に添えてある甘いおやつをそんなに求めない人間なので。

やはり気になる、と何度も振り返るコロッケ。そうこうしているうちにテレビからわーっと歓声が沸いて、なんだなんだと思っていたら大谷選手のいるチームが優勝したことがわかった。これは、また大谷選手がホームランを打った…?画面に「優勝」って出ているね…?と静かにざわざわしている友人と私のもとにお店の方がきて、優勝したねえ、と教えてくれた。もしかしたらファンと思われたかもしれない。
食事を終え、いよいよ本日のメインイベントのみかん狩りへ。受付の方にみかん狩りのルールについてレクチャーしてもらった後、みかん畑へてくてくと進んでいく。ずいぶん広いなと思ったけれど、この辺りでは一番大きいみかん園だったようだ。みかんの木を見る友人にカメラを向けたところ、彼女のおばあさまが写真にとられるときいつもこのポーズだった、というポーズを披露してくれた。
木によって味が違うので、ひとつ食べてみて好みのみかんを見つけてくださいという説明に倣い、しかしそんなにたくさんは食べられないよなと冷静な私と友人、ひとつを半分にする作戦でみかんの味を確かめる。これとかどうかな、と指さす私に、こっちの方がよさそう、とみかん奉行ぶりを突如発揮する友人。突然のきびしさにややうけていたところ、私ばっかりみかんを選んでごめんと謝られ、これは「○○ちゃんばっかりみかんとってる!」って怒り出すやつだね、と返す茶番。


持ち帰り用の袋を念入りに伸ばす友人をみながら、すでに袋に詰め出してしまった私。みかん、そんなに食べられるとは思っていなかったけれどたしかにわりとすぐおなかがいっぱいになる。そして15時までですが大丈夫ですかと念を押されたけど、そんなに長く滞在する場所でもない。しかしこの年齢になって友人と2人でみかん園にいる構図、客観的にみてかなりレア。平日だったので帰り際まで私と友人だけの貸切で、見渡すばかりいちめんのみかんの木、みかんの木、みかんの木、みかんの木、人間不在。それもいったいどんなに遠くにきてしまったんだろう?という不思議な気持ちに拍車をかけていた。
海に向かう途中、道の先に海が見えてきたときのあの瞬間が好き。みかん狩りを満喫した後はまた海に戻って、レジャーシートの上で海を見ながらおしゃべり、編み物、おやつ。



途中で波打ち際に降り立ったカモメがずっと付近を行ったり来たりしていて、話を聞かれているのかも、と軽口を叩き合う。等間隔で波打ち際に立っているのは釣りをしているひとばかりで、時々ヒュッと釣り竿を振り上げたと思しき音がする以外、オフシーズンの海辺は穏やかだった。
みかん狩りしかしていないのにどうしたことか、と言い合いながら、帰りの電車では泥のような眠りに襲われてふたりして眠り込んでしまった。今回諦めた方の遠足にも来月行けたらいいな。